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[あらすじ] 転校したばっかりで、新しい環境になじめない有羽。そんなある日、たまたま入った公園で謎のウサギと少年に出会います。
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秘密の庭のウサギ
1. 毎日が、なんだかつまらない 引っ越してきた町や高校にもまだ慣れないし、やりたいことも見つからない。 気分転換に、髪を染めた。 似合わない、変なの。 佐倉
有羽(さくら ゆう)17歳。 この年ごろで父親の転勤によって初めて引っ越しというものを経験した。 都会は空気もきれいじゃないし、人がいっぱいいるし‥元気が取り柄な有羽だが、こっちに来て二週間、全く活動的でなくなってしまった。部活にも入らず、四時には帰宅している
今日もぶらぶら遠回りして家に帰る。電車を一駅前で降りて、人の少ない通りをゆっくり歩いて帰るのが有羽のコースだ。
…あれ?こんなところに公園あったんだ…
いつもの道を一本奥に入ってみると、少し広い、小さな噴水のある公園があった。 片隅にアスレチックのような遊具があり、緑に囲まれているせいかひんやりしている。
いい場所見つけた 今日はお腹が空かなくて、さっき昼ご飯を買ったばっかりだった。 噴水脇にこしかけて、隣にサラダを広げおにぎりを食べる。
いい時間なのに、ちびっ子も散歩の老人もいない。静かで気持ちいい風。ここ、通おうかな。本でも持って‥本?無理無理、雑誌かマンガだなぁ。あっ、このシーチキンしょっぱすぎ! ぼんやりとどうでもいいことを考える幸せ そのとき
パリパリパリ 「ん?」 横から何かを食べる音がする。
白いウサギが有羽のサラダに首を突っ込み、本気で食べている
ウサギ…お腹空いてたんだね…
・・・ウサギ!!!?
「ちょっとキミ!!何してんの!?」 有羽がびっくりして声を上げると、ウサギはもっとびっくりしたらしく、サラダから飛び退いて逃げ出した。反射的に追い掛ける有羽。
ウサギは公園の端にある、立入禁止の緑地に飛び込んでいった。 なんだかすごくわくわくして、有羽も後をつけて潜り込む。
緑地は長い間人の手が入っていないようだった。忘れ去られたように、木や草に囲まれている。入ろうと思う人は普通いないだろう。 少し緑をかきわけて入ると、そこはぽっかりと開いた小さな丸いスペースになっていた。隅にぼろぼろの犬小屋がある。 寝転んで雑誌を読んでいる男子高生がいた。ウサギはその影に走り込む。 「・・・何、あんた」 眠そうに起き上がり、雑誌を置いてこっちを見る。きれいな顔。髪の毛にはメッシュが入って、耳にはピアスが二つ。いまどきの高校生って感じ。 「そのウサギ‥あなたの?」
「違うけど、ずっとここに住んでる。」 面倒臭そうに答える。
「今まで誰も入ってきたことないのに・・・」
だって、こんなところにウサギがいるなんて思いもしない。私もさっきサラダを広げなければ、きっと出会うことができなかった。そう思うと、有羽はすごくうれしくなった。
「なんて名前なんですか?」
「・・・ムー」
・・・変な名前。このお兄さん、ちょっとネーミングセンス悪いんじゃない?
有羽はウサギに手を伸ばして、なでようとした。野良なのに真っ白でふわふわな毛。かわいい。
すると
「ム゛ー!!」
「・・・え」
もう一度触る
「ム゛ー!!!」
ウサギが太い声で鳴いた。とにかく外見からは想像も付かない低い音。犬がうなったような・・
「警戒されてんだよ」男子がぼそっとつぶやく。ウサギは固まった有羽から飛びのき、フンッと鼻を鳴らし犬小屋の中へ消えていった。
かわいくない!!!!
さっきのわくわくはどこへやら、サラダも食べられ、挙句激しい拒絶。なんだこいつ!有羽はこっちに引っ越してから一番の衝撃を受けた。・・・そうか、だから「ムー」って名前なんだ。
「・・・毎日来てるんですか?」
「ああ、まあ。」 また寝転んだ男子は、雑誌から顔を離さず答えた。 「私も来ます!!」 「・・・え?」 嫌われっぱなしでたまるか!
有羽に、変な意地が生まれた。
次の日、退屈な学校が終わってすぐ、有羽はスーパーに直行した。
にんじんを三本購入。ウサギはにんじんが好きに違いない。図書室で調べてみたら、ウサギって結構神経質で怒りっぽい性格らしい。でも昨日の男の人には、ムーはなついていた。ずっと来ているんだろうか。昨日のあのときから、有羽の頭はあのウサギのことでいっぱいだった。
公園に着くと、また誰もいない。時間がゆっくり流れている。春には桜が咲くのかな
緑地に入るとムーがいた。有羽を見て戦闘体勢に入るかのように首をすくめる。
「こんにちゎ「ム゛ー!!」・・・・;;」
完全に嫌われている・・・にんじんを差し出しても見向きもせず、冷戦状態が続く。かわいくない!なんでこんなに心を開いてくれないんだろう。なんだかすごく悲しくなった。
・・・でも、私もそうかもしれない。今日もいっぱいクラスの子に話しかけられたのに、緊張しすぎてうまくしゃべれなかった。悪いことしたな・・・ちゃんとしゃべれたら、友達になってくれるのかな。もう前の学校じゃないんだから。新しい環境なんだから、自分から動かなきゃいつまでもなじめないのに。なんでうまくいかないんだろう・・・
有羽は仰向けに寝転んだ。空が青い。静かで、五月の日差しは柔らかくて、涙が出てきた。
いつの間にか眠っていたらしい。自分のくしゃみで飛び起きると、有羽は周りが暗いことに驚いた。
「・・・風邪・・・ひくんじゃ・・・」
「!!」
いつの間にか昨日の男子がいた。時計を見ると六時、さっきから二時間以上たっていた。顔が涙とよだれでカピカピだ。すでにムーは犬小屋に戻って丸くなっていた。
「すみません・・・。」 恥ずかしすぎる。こんなの女子高生じゃない・・・。 「・・・ムーは、にんじん嫌いなんだ。」
「え?」 「キャベツとりんごが特に好き」
下を向いて、消えそうな声で教えてくれた。この人、人と話すの苦手なのかな。
「あの私・・・佐倉有羽っていいます。T女子高の二年生です。あなたは?」 「・・・早川・・・翼。・・・K理美専二年」
「理美専!!すごい!あ、じゃあ同い年ですか?」
返事をしてくれるのがうれしくて、どんどん質問する。翼は答えてはくれるがこっちを向きもせず、かなり無愛想だ。格好は派手なのに、美容師さんってみんなしゃべるの得意そうなのに、不思議な人。
でも、やっと聞き取った翼の話によると、1年前にこの公園でムーを見つけたときからずっと通っているらしい。威嚇されなくなるまで半年かかったと聞いて、有羽は笑った。慣れてもらうまで半年も頑張って通いつめるなんて、よっぽどムーのこと好きなんだねと言うと、翼はきょとんとした顔をして有羽を見、真っ赤になってまた下を向いた。
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