儚い冬・雪が散るとき
"小説"  著作者:祭灯蒼      オンライン小説SNSへ

[あらすじ]
冬夢(ふゆむ)と夏椅(かい)の、切ない、ラブストーリー。
儚い冬・雪が散るとき
儚い冬・雪が散るとき

俺は、今、孤独の中にいる。
彼女を失ってから、僕は脱け殻のようになってしまった。
彼女は最後、何て言っていたっけ。
ああ、そうだ。
『二ノ宮、あたしね…』
思い出せない。
彼女のあの言葉が。
俺は、少しづつ、彼女を忘れてしまう。
少しづつ、少しづつ…
ゴメンね。許してね。
何も出来なかった俺を…

                ×××××

あれは、中学二年の時だ。
彼女は明るく、元気だけが取り柄の女の子だった。
俺も、彼女の存在が気になった。
とにかく元気で、誰からも人気があった。
がしかし、そんなことばかりではなかった。
ある日、俺は近くの公園に偶々通りかかった。
そこで見たのは、少しボロボロな姿で、ブランコに乗っている彼女だった。
顔は俯いている。
俺は、彼女に話しかけた。
「何してんの?」
と。彼女はバッと顔を上げて、僕の顔をまじまじと見つめる。
「にの、みや…?」
彼女は俺の名を言う。
そして、また俯く。
「どうした?」
俺が聞くと、彼女は、
「なんでもない。」
とだけ答えた。
「虐められてんの?」
「…二ノ宮には関係ない。」
彼女の声は震えていた。
「俺に話してみろよ。虐められてるんだろう?」
「…。」
彼女は頷いた。
「アタシはただ、皆と仲良くしたかっただけなのに…
  それなのに、」
彼女は言葉を切らせた。
「そうか…篠原は、友達いないのか?」
彼女は頷く。
「そうだな…だったら、篠原。俺と友達になれば?」
「へっ…?」
彼女は間の抜けた声で言った。
「俺もさー、友達いないんだよね。」
俺はブランコに乗って、空を眺める。
彼女はそんな俺を見つめる。
「ホントに、いいの?
  嘘じゃない?」
彼女の声が高くなった。
俺は頷く。
「ウソついてどーすんだよ。」
俺は彼女に笑顔を見せた。
彼女も笑って、俺を見る。
「アタシ、友達なんて初めてだ。
  二ノ宮、ありがとっ!」
その時の、彼女の笑顔が輝いて見えた。
俺は、そんな彼女が好きだった。
「何て呼ぼうかな…やっぱり二ノ宮かな?」
俺は頷く。
「じゃあ、俺は…」
「名前で呼んで。冬夢(ふゆむ)って。」
俺は驚いた。
「冬夢?」
「そう、冬夢。驚いたでしょ?
  アタシの名前に。」
そりゃあ…
「え、でも、不公平じゃない?俺だけ名前呼ぶの。」
「いいって。気にすんなって!」
彼女は笑って誤魔化した。
「よろしくな、二ノ宮!」
「ああ、こちらこそ。冬夢。」
こうして、俺たちは友達になった。

                ×××××

俺たちは、映画を観ることにした。
「に〜の〜み〜や〜。はーやくぅー。」
「わかってるって、今行くよ。」
俺は小走りで彼女の元へと駆け寄る。
「おそーい!」
「ゴメン…」
俺は素直に謝った。
「フフフッ。冗談だよ。それより早く行こう!始まっちゃうよ。」
彼女との映画なんて初めてだ。
俺たちが席に着くと、映画は丁度始まった。
映画は感動系の恋愛モノ。
俺は観る気にならなかったが、彼女が観たいって言って、つき合わされた。
約二時間半。映画は終わった。
意外に感動できた。
彼女は…
「よかったなぁ〜!エリザベス!!」
大泣きだ。
「ぷっ。」
俺は思わず笑ってしまった。
「あっ、二ノ宮今笑っただろー!エリザベスを馬鹿にするなよ!」
俺は更に笑ってしまった。
「おいー…そんなに笑うなって!」
「ご、ごめ…くくくっ!」
彼女は笑いすぎている俺の足を蹴った。
「いって!」
「天誅だ、バカ!」
彼女はそっぽを向いた。
「ごめん、悪かったって。」
彼女はこちらを向いた。
頬を膨らまして、僕を睨んでいる。
「本当に、反省したかぁ?」
僕はコクコクと頷く。
「ならよし!」
彼女はニカッと笑った。
俺も笑う。
「二ノ宮、次。ドコ行く?」
「ん〜…そうだな…あそこのカフェは?
  丁度お昼だし。」
俺はカフェに指差して言った。
彼女はパアッと顔を輝かせて、何度も頷いた。
「うんうんっ!行く!!」
俺は彼女に引っ張られて、カフェに入った。
カフェの中はとても静かで、落ち着いた空間だ。
俺はホットミルクを頼み、彼女はチョコレートパフェを頼んだ。
「よく、そんなに食えるね…」
「む、ほう?」
彼女は口にバナナをほおばっていた。
「喉に詰まらせんなよ。」
俺は笑いながら言った。
数十分後、彼女はパフェを見事に完食した。
「はー!おいしかった!」
彼女は満足げに言った。
俺は会計を済ませて、彼女の後についていった。
「ここは…」
「公園だよ。アタシたちが最初に話した場所。」
「それは解るけど…でも、なんで?」
俺が聞くと、彼女はブランコに座った。
そして、ゆっくりとこぎだす。
「冬夢?」
俺は名前を呼ぶ。
「二ノ宮、アタシね…」
そこで言葉を切らせてしまった。
ピタリと動きを止めて、そのまま動かなくなった。
沈黙。
沈黙。
僕らは黙ったまま、時を過ごしていた。
「やっぱり、何でもない。
  ごめんね!変なこと言って。」
俺は顔を見る。
泣きそうだ。
彼女は泣きそうな顔をしている。
彼女はブランコから降りると、俺に近寄って、
「二ノ宮‥アタシのこと、忘れないでね…。」
彼女はそのまま走り去ってしまった。
なんだったんだろう…?
俺はそのまま家に帰った。

                ×××××

ある日、俺と彼女は公園で待ち合わせをした。
俺の方が先に着いてしまったので、彼女を待っていた。
すると、彼女は走って俺のところに来た。
が、途中で転んだ。
「っ!?冬夢、大丈夫かー?」
俺は彼女のところに駆け寄った。
すると…
「なに…?これ……」
俺は息を呑んだ。
彼女の右足が、雪のように散っていた。
「冬夢!」
俺は彼女の名を呼ぶ。
「二ノ宮…アタシの足、消えた…?」
「う、うん…。」
彼女は上半身を起こして、俺にしがみつく。
「冬夢、これって…」
「雪散り病‥。」
雪散り病…聞いたことはあった。
確か、身体が雪のように儚く散っていく、不治の病…
「ふ、冬夢…?」
「二ノ宮…アタシ、死んじゃうのかなぁ?」
彼女は目にいっぱい涙を溜めた。
そして、零れ落ちる。
「にの、みやぁ‥」
俺の名を呼ぶ。
「にのみやぁ…アタシ、死にたくない‥死にたくないよう…!」
彼女は俺に抱きついた。
俺は、事情が飲み込めなかった。
彼女が‥雪散り病?
俺は彼女を強く抱きしめる。
「にの、みやぁ…」
彼女は泣き続けた。
ああ…こういうことだったのか。
彼女が突然映画に行こうって言ったのも、公園で何かを言おうとして止めたのも…
彼女が死ぬからか。
俺は、いつの間にか泣いていた。
彼女と共に、泣いていた。
「にのみや…?」
哀しすぎる。
どうして、どうして、彼女なんだ?
彼女は、何かしたのか?
俺は悔しかった。
何もできないだなんて…
「冬夢、俺は…」
「二ノ宮…アタシのこと、忘れないいで。
  二ノ宮、にのみや…」
そう言って、彼女は何度も俺の名を呼んだ。
雨が降る。
大降り。
まるで、全てを洗い流すように…
泣きじゃくった顔で、彼女は言った。
「二ノ宮…アタシね、二ノ宮のこと、大好きだよ。」
「うん。俺も大好きだ。」
俺の胸で、彼女は泣いている。
「好き、すきぃ…二ノ宮…だいすきだよぉ‥‥」
俺は彼女をきつく抱きしめた。
その時、彼女の両腕が消えてしまった。
「い、いや…消えないでっ!」
それでも、雪のように、散っていく。
「いや、いやだ…!まだ、まだ、まっててよ!」
俺は彼女顔を上げさせた。
そして、キスをする。
「んっ…」
軽く、触れ合うだけのキス。
でも、深くて長い。
「はあ、はあ…二ノ宮…!」
「俺は、冬夢のコト、絶対に、忘れないから!
  ずっと、冬夢のコト、想ってるから!」
俺は精一杯声を張り上げた。
「約束する。冬夢、俺たちは、ずっと、永遠に友達だ。
  だから、冬夢。もういいから…」
俺は微笑んで、また、キスをする。
「二ノ宮…アタシね、」
身体が雪のように散っていく。
「冬になったら、夏椅(かい)のところに還ってくるから…
  雪になって、還ってくるから…!」
初めて、名前で呼ばれた。
彼女は優しく微笑んでいた。
「アタシは、冬夢。
  ふゆ、の‥ゆめ‥‥」
彼女の身体は散ってしまった。
「冬夢…!」
さっきまでいた、彼女の体温が、徐々に消えていく。
雨の中、俺は一人。

                 ×××××

そうだ。
彼女は冬に戻ってくるのか…
俺は空を見上げた。
すると、雪が降ってきた。
「あぁ…冬夢、おかえり‥‥」
俺は小さく言った。
「いま、いくよ…」
俺の身体は、雪のように散っていった。

『アタシは、冬夢。
  冬の、夢。』

               −END−

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