シロとクロの物語
泣ける小説  著作者:伽羅      オンライン小説SNSへ

[あらすじ]
白い犬と黒い犬だから、シロとクロ!!
いろんな事を教えてくれたシロとクロに贈るレクイエム・・・
シロとクロの物語
つまらなかった。
ママの付き合いで土地勘もない街にきてはみたものの・・・
大人しかいない中、子供の私が楽しいはずもなく
散歩に行くと言って、一人で歩きまわりだした。

何にでも興味を持つ私は、不思議なものを見つけるのに時間はかからなかった。
花束・・・おもちゃ・・・
そして、何より不思議だったのは、ジャムの小瓶に砂のようなものがはいったものが
祠みたいなところに、ぎっしり詰められている。
何だろ??何だろか??
好奇心の抑えられない私が、小瓶に何か書いてあるのを見つけて、覗き込もうとした
とき
どこからか、
「く〜ん く〜ん・・・」
もの淋しい泣き声が響いてきた。
目の前の小瓶の文字も気になったけど、この淋しそうな声に呼ばれているようなきに
なって、声のするほうに歩き出していた。

しばらく歩くとものすごい大きな檻を見つけた。
私も住めてしまいそうな、大きな大きな檻の中に、ダンボール箱がぽつんと置いてあ
る。
こんなに大きな檻なのに、こんな小さな箱ひとつ!
この不自然さが気になった私が、近ずくと
ダンボール箱の中から、2匹の仔犬が顔を出した。
淋しそうなあの声の主は、この子達だったんだとわかってほっとした。
檻は、何故か大きく入り口が開いていたので、私は檻の中に入っていった。
「くんくん・・・く〜んく〜ん・・・キャン」
どうやらお腹がすいているらしく、私の指に吸い付いてくる。
「何でこんなとこにいるの?君達のママは何処??」
私が聞いてもわかるはずなんかないなと笑ってしまった。
この真っ白な仔犬と真っ黒な仔犬は、きっと双子ちゃんなんだろうな・・・
ということ、ママがいなくてお腹が減っていること・・・
私には、そんなことしかわからなかった。
でも、このままこの子達をここに置いていくなんて出来なかった私は、
ダンボールの箱ごと檻からこの子達を連れ出していた。
「ママに言ってミルク買ってもらわなきゃ。」
ただ、それだけしか頭の中になかった。

さっきの不思議な祠を通り過ぎて、もう少しでママがいる所だと思ったら、ママが私
を探しに出てきたところだった。
ダンボール箱を抱え汗びっしょりになっている娘をみつけママは、もちろん驚いてい
た。

「どうしたのその箱?」
ママが聞く。
私が話すより早く、ぴょこっと顔を出す仔犬達。
私がこの子達が、どうやらお腹をすかせているらしいということ、この先の檻の中に
いたことを説明すると・・・
ママが、
「誰もいなくて、お腹すかせてたらかわいそうだね。ん・・・じゃどこのお家の仔犬
ちゃん達かわからないから、ミルク飲ませてあげたら、元のお家に返してあげなきゃ
ね。」
そう言って笑った。

ママの車に、ひとまず仔犬ちゃん達を乗せて、近くのコンビニで牛乳と、紙で出来た
お皿も買った。
元の場所まで戻って紙皿で、ミルクをあげた。
二頭ともものすごい勢いで、ミルクを飲んだ。正確には、なめたのかも。
美味しそうに飲んでいる姿が、めちゃくちゃ可愛くて心の中では、連れて帰りたく
なってもいた。
たっぷり飲んで満足げな二頭が私の手をなめたりすりよってくる。
可愛くてたまらない。
ママが、
「あなたのこと、きっとママだと思ってるんだわ!」
そう言った。
ますます私はこの子たちのことが可愛くなってしまった。
そろそろ日が傾いてきて、あたりが夕焼け色になってきてしまったのでママが言い出
した、
「さぁ、この子達を送っていきましょ!きっと心配してるから。」
返したくない気持ちでいっぱいだった私も、この子達のママが、心配していたらかわ
いそうだと思って、しぶしぶ送ることにした。
ダンボール箱は、私が抱えて仔犬達に幸せになってね・・・ずっと元気でいて
ね・・・
そんなことを話しながらなるべくゆっくり歩いた。
さっきの祠を通り過ぎるときママに聞いた。
「ママ、これは何?」
ママがいいにくそうな顔をする。
そしてママが、話し始める。
「あのね、動物達を家族みたいに飼うでしょ!家にも犬がいるよね。」
家には、いろいろな事情で犬が3頭いた。
どの子達もみんな家族で可愛かった。
私は、動物が大好きだった。
そして、ママの話は続く
「ただ、どうしても飼えなくなってしまう時もあるってわかってくれる?」
私は、何がいいたいのかわからなかった。
とまどいを隠せない顔で、ママの話を待つ。
「例えば、可愛がってた動物が治らない病気になって苦しんでいる時とか楽にしてあ
げたくなるときがあるの。
それから、動物が飼えない環境に引っ越さなきゃならなくなったとか、家族にアレル
ギーがでてしまったとか、一生懸命良い飼い主さんを見つけようとしても、見つから
なかったりしたら・・・。」
ママが、口ごもる。
代わりに、私が言った。
「殺しちゃうの?もしかしてあれは、そういう動物達のお墓なの?」
ママが、うなずく。
「だって・・・家族でしょ!何でそんな酷い事すんの・・・」
私は、びっくりしたのと同時に、悲しかった。
涙があふれてきそうになるのを、必死にこらえて仔犬達の幸せを願っていた。
そこに、あの大きな檻がみえてきた。
「ママあそこのおおきな檻の中にいたのこの子達。まだこの子達のママ帰ってない
ね。良かった。」
振り返ると、ママの顔色が変わっていた。
「どうしたのママ?」
ママは、どうしたらよいか混乱した様子だった。
そのうち私の背にあわせてママもしゃがみこんで、ゆっくり話しはじめた。
「檻の後ろに大きな建物があるよね。」
「うんうん。ここの子なんでしょ!すごいお家だよね!」
ママの様子がおかしいのに気づいた私は、そのまま黙って話しを聞くことにした。
「これは、お家じゃなくて・・・あそこの板に○○保健所って書いてあるの。」
ママが辛そうに話す・・・
「さっき話したと思うけど、どうしても飼えなくなったり治らない病気で苦しんでた
りする動物達が、ここにくるの。」
そこでようやく私は、気がついた。
この子達が、ここにいたら殺されてしまうという現実を。
涙が止まらない。
言葉が出てこない。
どうしたらいいの?まだ、生まれてきたばっかりじゃない、この子達。
ママは、きっとこの子達を探してる。
きっとこの子達がいなくなって、悲しくて泣いてるに決まってる。
親子両方かわいそうだ。
何のために生まれてきたのか、わかんないじゃない。
そんなことが頭の中をぐるぐる廻る。
ママが言う。
「かわいそうだけど家は、3頭で精一杯だからこの子達は、置いていくしかない
わ。」
私は、ダンボール箱を抱えて離さなかった・・・離せなかった。
どうしたらこの子達をつれて帰れるのかそれを必死で考えている。
私は、ママにこう言った。
「ママ・・・この子達の飼い主さん見つけてあげちゃダメ?お願い家で飼えないって
わかるけど・・・飼い主さんが見つかるまでだから・・・お願いします。」
薄暗くなった保健所の前で、私は何度も泣きながらママに頼んだ。
相当迷ったママも・・・
1週間の期限付きで連れて変えることを許してくれた。
ママも動物が大好きなことは、良く知っていた。
1週間といったけど・・・
ママは、この子達をうちの子にしてくれると思った私は、嬉しくてママがまた大好き
になってしまった。
今泣いたからすが、もう笑った!そうからかわれながらも・・・
ついつい顔がにやけてしまう。
ママと私と仔犬達は、元来た道をまた戻っていった。
祠にさしかかったとき・・・
私は、ママに仔犬達をあずけて、祠の前で手を合わせて、心の中でこういった・・・
「あなた達の分まで、この子達を幸せにするからね!」
ママと仔犬たちのところに戻り、車に乗り込む
車が走り出し私は、仔犬たちとじゃれあう。
ママが、運転しながら聞いてきた。
「ねぇ、その子達の名前決めたの?」
私は、ニヤリとして答える。
「出会ったときにもう決めてたの。シロとクロってね!」
ママが、笑いながら言う
「みたまんまじゃない!でも、判りやすくていいかもね。」
ママも本当のところ、シロとクロが気に入っているのが良くわかる。
家に着くと、私はシロとクロをお風呂に入れた。
きれいに洗ってあげてしばらくは、家の中で飼うことにしたからだ。
シロもクロも私に良くなついてくれた。
夜は、私のベットで一緒に寝た。
もう、飼い主さんを探す気なんかさらさらない私に、あきれるママ。
ママも諦めていたらしい。
ある日ママが、シロとクロが家の中ばかりじゃかわいそうだから、お散歩に連れて
行ったらと言ってくれた。
私は、とても嬉しかった。
友達に自慢していたからだ。
シロとクロの話は、近所の友達に話してあった。
みんなに見せる機会ができてはしゃいでいた。
そして、友達に電話をしてどんぐり山にお散歩しに行くことになった。
どんぐり山は、歩いて10分くらいのとこにある山で、秋になるとどんぐりが沢山落ち
ているので、みんなどんぐり山と呼んでいた。
まだ夏なのでどんぐりは、落ちてないけど大きな木が木陰を作ってくれるので、
とても気持ちよかった。
友達がクロ、私がシロを連れてどんぐり山へ向かった。
どんぐり山には、もう何人か友達がきていて、みんな近寄ってきては
「かわいい!!」
「抱っこしてもいい?」
そんなことを言った。
得意気に私は、
「いいよ。でも、優しくしてね。」
そういいながら、笑った。
仔犬達と私達は、ここが大好きで雨が降らない限り、ほとんど毎日ここにきて走り
回った。とても穏やかで楽しい日々が続いて、私はすっかり仔犬達のママになりきっ
ていた。
シロとクロが私のところにやってきて、幸せだったのかはわからないけど、少なくと
も私は、シロとクロに幸せにしてもらっていた。
気がつけば、夏休みも終わり、学校がはじまった。

朝私が学校に行くときになると、シロとクロがそわそわしだす。
自分たちも連れて行ってほしいらしい。
そんな姿もかわいくて、玄関で
「学校行ってくるから、良い子にしててね!急いで帰ってくるからね。」
そう言ってギュッとしてあげた。
ママにしっかりシロとクロのこと面倒見てね!と頼み込み・・・
後ろ髪を引かれながら、学校へ行った。
学校でも、友達と今日もどんぐり山へ行こうと話をしていた。
みんなシロとクロと遊ぶのを楽しんでくれていることが、私も嬉しかった。
友達といろいろな話をしながら家に着くと、知らないお姉さんとママが話しこんでい
た。
「ただいま!」
一言いって、お姉さんにもぺこっと頭を下げた。
ママが、
「いいところに帰ってきたわね!」
という。
私には、何のことかわからない。
「このお姉さんが、シロを引き取りたいって言ってくれてるのよ。」
私は、驚いて声も出ない。
ママが続けて言う
「あなた達が、どんぐり山で遊んでるところを良く見ててくれて、是非引き取りた
いって言ってくれたのよ。クロは、ちょっとかわいそうかもしれないけどシロは、可
愛がってもらえるから。」
私は、お姉さんの方は見なかった。そして、ママに向かってこういった。
「ママ、友達とシロとクロをどんぐり山に連れて行くの!だから、シロはあげな
い。」
家の中に入ろうとする私の腕をつかみ、
「あなたは、約束をやぶったでしょ!シロとクロに飼い主さんを見つけてあげるか
ら、連れて帰っていいかって言ってたのに、探してあげたことなんかなかったじゃな
い。」
ママが言ってることは、正しかった。
「だって、私が飼い主になったじゃない。あの子達の飼い主は、私だから・・・だか
ら・・・この人になんかあげない。シロもクロも誰にもあげない。」
そう言って泣き出した私の頬を、ママがたたいた。
びっくりしたのと、自分がダダをこねてる恥ずかしさが入り混じってどんどん涙があ
ふれてくる。
「シロは、お姉さんのお家の人達が、幸せにしてくれるからあなたが、シロをお姉さ
んにお願いしなさい。」
ママが言った。
渡したくないけど、やっぱりシロには、幸せになって欲しい・・・
クロと一緒に遊びに行けばいいよね!
シロのとこに遊びにいけばいいよね!毎日あいにいこう。
みんなが幸せになれるかもしれない。そう心の中で思った。
私は、黙ってシロを連れてきた。
お姉さんの顔は、見れない。そっぽをむいたままゆっくり話しだす。
「お姉さんの家は、どこら辺ですか?」
お姉さんは、びっくりしながら、
「どんぐり山の入り口にあるの。」
そう答えて、にこっとした。
私は、近くで良かったとほっとした。
「あの、シロがいなくなったら、クロが淋しがるし、会いにいってもいいですか?」
お姉さんが、いつでもクロと遊びにきていいといってくれた。
そして、もう一つ大事なことを言っておきたかった。
「この子達を連れてくるときに、沢山の動物達に約束したんです。この子達を、必ず
幸せにするって。だから、お姉さんのお家に行ったら、シロを今以上に幸せにしてあ
げてください。」
泣きながら、でも必死で仔犬達の母親役をした私が、シロをお姉さんに渡す。
お姉さんも、少し泣きながらシロを受け取った。
何度も有り難うと言い、シロのことはまかせてね!と言ってシロを抱きかかえてお姉
さんは、帰って行った。
お姉さんの姿が見えなくなったとき、私は、ママに抱きついて泣いた。
「これで、良かったんだよね。シロは、幸せになるんだもんね!ママ私がんばったで
しょ!ちゃんとお願いしたもん・・・」
泣きながらで、うまく言葉にならない。
ママは、
「えらかったよ!がんばった!シロのママだったんだもんね、きっとシロは、世界1
幸せな犬になるよ。」
そういってぎゅっとしていてくれた。
心配そうにクロが私に擦り寄ってくる。
私もクロを抱き上げる。
「クロ・・・シロが行っちゃった・・・でも、会いにいこうね!」
クロも心なしか、淋しそうだった。
その日は、どんぐり山にいくのをやめてしまった。
どうしても、はしゃぐことができそうになかったから。

次の日学校で、友達にどんぐり山へ行かなかった訳を話した。
みんな私に元気をだせ!って言ってくれた。
そして、今日みんなでシロの様子を見に行こうということになった。
私も一人では、行きにくかったので、友達もきてくれるのが、心強かった。
学校が終わってから、一旦家に帰りクロを抱っこして、待ち合わせ場所に向かう。
近所の小さな公園に友達が3人来てくれていた。
4人と1頭は、シロの新しいお家へ向かった。
どんぐり山の入り口に下り階段があった。そのくぼ地に建っている家が、シロの新し
いおうちだった。
家の中で飼われているのか、庭にシロのいる様子はなかった。
悪いことしているわけじゃないのに、何故か私達は、こそこそ覗くように、シロがい
ないか探した。
なんとなく、
「すいません、シロにあいにきました。」
と堂々と、行くことができなかった私たちが、どんぐり山へ行こうかと話し始めたと
き、
縁側の廊下を走っていくシロの姿が、ガラス越しに見えた。
「あっ・・・シロだ!いたね!」
姿が見れただけで、クロも嬉しそうに見える。
みんなも、そして私も笑顔だった。
ちょこちょこ走っていく姿だけで、シロが幸せなんだなと思えたから。
誰ともなく、どんぐり山に歩き出していた。
シロが行ってしまってまだ1日なのに、とても長い1日だった。
でも・・・今日シロの新しいおうちを見て、ほんの少しだったけど、シロの姿も見ら
れて沢山の人に大切にされているようで良かったと思った。
私の中に、お姉さんにお願いはしたけど、もし見に行ったとき、そこの家の誰かがシ
ロをちょっとでもいじめていたら、すぐに連れて帰ろうと思っている自分がいた。
ほんの少しだけしかシロの姿は見えなかったけど、可愛がられてるんだなという風に
感じたのか私は、連れて帰ろうと思うより何故か、これで良かったんだと思えたの
だった。
どんぐり山で、ひとしきりみんなと遊んで、
帰り道、クロと二人になったとき、
「ねぇクロ!またシロに会いにいこうね!こんな近くだしね!」
そうクロに話かけた。
クロは、私の話がわかったのか、わからなかったのか・・・
私のほうを向き、
「わん・・・」
とほえた。

家に帰ってから、ふと考えた。
シロは、まだきっと新しいお家や、家族の人達になれていないかもしれないなぁと!
そんな所に、私たちがうろうろしてたら、シロもなかなか新しい環境に慣れていかれ
ないんじゃないかなと・・・
そして、私は決めたのだった。
やっぱり、当分シロに会いに行くのをやめようと。
いつか、時間がたって、シロが本当にお姉さんの家の家族になったときに、遊びに行
こうそう思ったから。
そして、シロがいなくなって1番淋しいはずのクロを、可愛がってあげようとも思っ
た。実際その日から、私は家にいるときは、ほとんどクロと一緒にいたし、本当にか
わいがった。
私もクロも少しずつシロのいない淋しさを、忘れていかれるようなきがした。

そんなある日
いつもなら、学校から帰ってくると、嬉しそうに玄関までやってきてお出迎えしてく
れるはずのクロがいない。
「く〜〜ろ〜〜〜!!くろってば〜〜!」
呼びながら、家中を探し回った。
クロがいない。
どこにもいない。
私の中で不安がよぎる、まさかクロまでいなくなるなんてないよね。
ママが、お帰りといった後、私に話しがあるからといって私を呼んだ。
ママが言う
「多分今から話すことにあなたは、言いたいことが沢山出てくるだろうということ
は、わかっているんだけど、お願いだから最後まで聞いてほしいの。約束してくれ
る?」
嫌な予感が走る・・・
ママに向かって一応うなずいた。
ママがテーブルの上に見覚えのある小瓶を置いた。
私の顔が凍りつく・・・
あの祠にあったのと同じ小さなジャムの小瓶だったから。
私は、わけがわからなかった、口もきけずにママを見る。
ママがこう言った。
「シロが、交通事故にあってしまったの・・・」
驚きと悲しみで、涙があふれる。
ママの話によれば、お姉さんのうちの人がシロを庭で遊ばせていた時に、
学校帰りの子供達の声がしたとたんにシロは、声の方に向かって飛び出していったら
しい。
きっと、あなたが来たんだとおもったんでしょうねとママは言った。
私は、大きな声で泣き崩れた。
どれくらい泣いていただろうか・・・
ママは、何も言わずに黙って私を見つめている。
泣きつかれてぼーっとしながら私がつぶやいた・・・
「シロは、私に出会わなければ事故にあわずに生きていられたのに・・・」
ママが口を開く
「それは、間違ってるでしょ!あなたがあの日、檻の中からシロとクロを連れて帰ら
なければ、あの翌日にはこの世にいなかったかもしれないでしょ。」
そうかもしれないけど・・・
でも、悲しくてどうしようもなかった。
真っ白で、ふわふわで、良く走り回って甘えてきた私のシロは、もうこの小瓶の
中・・・
私は、シロの入っている小瓶を抱きしめた。
ママは、シロの小瓶をあの祠に持っていくと言った。
私は、それに反対した。
シロをひとりぼっちにしたくなかったから。
小瓶のシロを今度こそ手放したくなかったから・・・
ママの了解をなんとかとりつけて、私はシロの小瓶を大事に机に置いた。
その後、ママが
「クロなんだけどね!お姉さんのお家にお願いしたの。」
私は、振り返りママのほうを見た。
「勝手に、私がいないうちに、何でそんなことしたの?」
ママに詰め寄る。
落ち着きなさいと、私を制してからママが静かに話しだす。
「あなたが悲しいように、お姉さんやその家族の人たちも、悲しかったと思うの。だ
から、お姉さんがクロを引き取りたいっていったときにママは、迷わずにお願いしよ
うと思ったの。でもあなたが、シロの死を知って、クロがいなくなるなんて言ったら
きっと怒るだろうなと思ったから、あなたがいないうちに連れて行ってもらった
の。」
目の前が真っ暗だった・・・
本当にひとりぼっちになってしまったようで・・・
私がいない間にクロをあげてしまったママなんか大嫌いだった。
でも・・・本当のところママが言っていることも判る気がした。
ただ素直に受け入れられなかった。
シロもクロも私のそばにいなくなるなんて・・・ショックだったから。
ただクロに会いたくても、絶対に会いに行かないと心にきめていた。
もうシロのようなことにだけは、なって欲しくなかったから。
あきらめて受け入れるしかない現実だった。

日がたつにつれて私は、落ち着いていった。
小瓶のシロに、クロは元気だろうかと話してみたり・・・
シロとクロの思い出話をシロにはなしていた。
そして、やっと1週間がすぎようとしていた・・・

その日は、なぜか学校から帰ってもお友達と遊ぶ気になれなかった。
机の上のシロの小瓶を手に取り、今日も暑かった事・・・
クロはどうしているかな・・・そんなことを話していた。
そこに、電話がかかってきたのだった。
買い物に出かけていたママが電話してくるなんて、珍しいことだったので、
何があったのかどきっとした。
ママが言う
「ごめんね。ちょっと用事ができちゃったから、遅くなるけどお留守番しててね。」
なーんだそんなことか・・・
私は、ほっとしながら
「わかったよ。じゃーね!」
そっけなくそう言って電話を切った。
それなのに・・・
何か気になってしまう、いつもこんな感じで遅くなっても電話なんかすることはない
のに何故今日に限って電話なんかしてきたのか
気になってしかたなかった。
なんとなく落ち着かない気分のまま1時間がたち・・・2時間が過ぎ・・・3時間が
過ぎた・・・なのにまだママがもどらない。
嫌な予感がする。
車で出かけているママを探すこともできないので、電話がもう一度かかってくるかも
しれないと思って電話の前をうろうろする。
4時間少したったころだった。
車の音がして、ママが帰ってきた。
私は、心配していたことを悟られないように、慌ててテレビをつけて平然を装ってい
た。ママがかえってきたので
「お帰り。」
とだけ言って、テレビをみつづける。
「遅くなってごめんね。お腹すいたでしょ夕飯買ってきちゃったから食べよ。」
頭だけでうなずきママとお弁当を食べた。
さっきの、妙な胸騒ぎはなんだったんだろうか?
私の取り越し苦労だったのかもしれない・・・
そうほっとしたのもつかの間だった。
ママが言いにくそうにきりだした。
「あのね・・・あなたには、本当につらい報告をしなくちゃいけないの。」
やっぱりなんかあったんだと耳を覆いたくなっていた。
何も聞きたくなかったし、何も考えたくなかった。
なのに、ママの話は私の耳に一方的にはいってきた。
「クロが、シロと同じように事故にあってしまったの・・・さっき・・・」
そういってもうひとつ小瓶を出した。
声もでない。小瓶にふれることも出来ない。
ただただ涙だけが流れて落ちる。
どうしてこんなことになってしまったのか・・・
シロとクロに幸せに暮らして欲しかっただけだったのに・・・
私とであってしまったからシロとクロは、事故にあってしまった。
まだまだ生きられたはずなのに・・・
私のせいだと思った。
その日から私は、抜け殻のようになってしまった。
生きているのに、何も感じられない。
ただシロとクロの小瓶をみては、泣いていた。
どれくらいの日がすぎたのかも自分でわからないくらい、ただ生きているだけだっ
た。
ママの異変にも気がついてあげられなかった事は、今も後悔している。

ある日、私はいつものように学校から帰って机のシロとクロの小瓶をボーっと見つめ
ていた。
洗面所から嘔吐する声が聞こえてびっくりした。
見に行ってみると、ママが真っ青な顔をしてしゃがみこんでいた。
私は、恐る恐る
「ママ、大丈夫。」
そう声をかけた。
ママは、
「大丈夫よ。やっとあなたの声が聞けて良かった。」
そういって泣いていた。
そんなママを見ていたら、とても自分勝手に殻の中に閉じこもっていた自分が、きら
いになって、そんな自分勝手な娘をずっと心配してくれていたママが大好きだと思っ
た。
「ママごめんなさい。ママが1番辛い役をいつもしていたこと気がつかなくて。こん
なんじゃ・・・シロとクロのママ失格になっちゃう・・・」
そう言ってママに抱きついて泣いた。
ママが優しく頭をなでながら話はじめた。
「あなたは、シロとクロの立派なママだったから、シロとクロは幸せだったと思う
の!
あなたが幸せにしてあげたから、シロとクロはあなたのことも幸せにしてくれていた
はず。立派なママよ!」
嬉しかった。
私のせいどころか、私が幸せにしてあげてシロとクロが私を幸せにしてくれた。
ママは、シロとクロのことも、いつも自分勝手な娘のこともいつもちゃんと見ていて
くれていたんだと思えること・・・すべてが嬉しかった。
ママが続けて話す。
「ママは、お腹の中に赤ちゃんが出来ました。ただ、ママの体調があまりよくなく
て、お医者様が、反対してるの!」
私は、全然きがついていなかった。
ママに赤ちゃんが出来たなんて、一緒に暮らしてたのに・・・
沢山の後悔がよぎる。
そんな大切なときに、私はママに甘えきって自分勝手なことばかりしいた。
動揺が隠せない私にママが言う。
「ママは、このお腹の子を私の命にかえても産むつもりなの。シロとクロのママじゃ
ないあなた。シロとクロを、幸せにしてあげたように、この子のことも幸せにしてあ
げてくれないかな?ママに力を貸してくれない?この子はきっと幸せになるはずよ!
だって2人も素敵なママがついてるんだもん。」
私は、ママになることを約束した。
必ず私が幸せにするからね。そういって笑った。

気がついたら、良く笑い、良く泣いて、良く怒っているもとの自分に戻っていた。
来年の春生まれてくるママと私の赤ちゃんの事を思いながら。
それでも、シロとクロのことを忘れたことなんかなかった。
そして私は、決めた。
シロとクロが大好きだったどんぐり山にシロとクロの小瓶を埋めてあげようと・・・
離れた祠で淋しい思いをさせたくないと思ったのと、赤ちゃんが生まれたらどんぐり
山で遊ばせようと思ったから。
そしたら、きっとシロとクロも一緒に赤ちゃんを守ってくれそうで・・・
やっとシロとクロがゆっくり休める場所を見つけてあげられたようで、私も安心し
た。

どんぐり山の中でも一際大きな木の根元の土を、なるべく深く掘り返した。
そこに、2つ並べてシロとクロを埋めてあげた。
帰り道ふと思った。
もう風は、すっかり冷いなぁと・・・
でも私は、心の中がとても暖かく感じていた。
心の中に、いつもシロとクロがいてくれるとわかったからかもしれない。

シロ・・・クロ・・・
ありがとう

著作者:伽羅      ホームへ
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