留守番電話
恋愛小説  著作者:桧垣☆雨龍      オンライン小説SNSへ

[あらすじ]
一言の留守番電話のメッセージは過去に聞いたメッセージだった・・・・・
留守番電話
トルルルルルル
真っ暗闇の部屋の中に電話の着信音が鳴り響いた。数秒鳴っていたが切れた。一言のメッセージを残して・・・・。

佐藤亮太が仕事を終え、自分の部屋に帰宅した。
社会人は時計で価値が決まるといってもおかしくない。だから亮太もいいブランド物の時計をしていた。誰かからプレゼントされたわけでもなく、自分で買ったものだ。
今年で、三十四歳になり出世もしてだいぶ給料が増え安定した生活を送れるようになってきた。
だが結婚はまだしていない。彼女いない暦=年齢だ。告白をした事はない。
一度だけ好きな人を呼び出したのだが、怖くなって逃げ出してしまった事がある。
当然彼女は翌日からずっと怒っておりその後一生話したことはなかった。
亮太は一人暮らしなのでもちろん部屋の中には誰もいなくて真っ暗だった。
帰ってきて「おかえり」などと言ってくれる人などいない。
部屋の中にピカピカ光る光があった。それは留守番電話のメッセージのランプだった。
亮太は部屋の電気をつけその電話へと近づいた。
電話の近くには鉄棒の前に一人だけ、ただ一人で佐藤亮太が写っている写真があった。
そんな過去の写真を見つめながら再生ボタンを押した。
「一件のメッセージがあります」
という独特のイントネーションがおかしい機械の女性の声が聞こえた。その後にピーという音が流れた後に聞き覚えがある声のメッセージが聞こえた。
「九時に学校の鉄棒の前に行けばいいのね?」
そのようなメッセージだった。この声は、聞き覚えはあるがどうしても思い出せない。
九時といえば今は七時ちょっと過ぎなのであと二時間弱。
こんな約束はした覚えはない。それどころか三十四にもなっていまさら学校などに用はない。
だが、今はしていなくても過去に同じ約束をした覚えがあった。
思い出した。過去にこの声を聞いた事がある。そしてまったく同じメッセージも。それは今から丁度十六年前の同じ日に。
ただ、それを聞いたのはその日の午後十一時五十三分だった・・・・・。
ちなみにこのメッセージの相手とは僕が好きだった『小林奈々』だ。
不思議な事もあるものだ。機械の故障なのだろうか?
そのメッセージが流れた後に「このメッセージは六時五十四分に記録されました」という機械の女性の声が流れた。
その声が流れ終わった瞬間、部屋の電気が切れた。
そしてイキナリ部屋が光りだした。思わず亮太は目をつぶった。

目を開けると目の前には暗闇の中に月明かりのみに照らされる白で統一された自分が通った高校があった。しかも服が当時着ていた制服になっていた。
暗闇にある学校というのは不気味なものだ。薄暗くて気味が悪い。
現在の時刻は八時五十五分十一、十二、十二・・・・。
タイムスリップでもしたか?と思った。
だけどそんな事があるはずがない。信じないで半信半疑で当時約束をしていたのにもかかわらず、行けなかった十二月二十一日の午後九時の学校の鉄棒の前に行ってみた。
わずかな月明かりが照らす学校の銀色の鉄棒の前には驚くべく人が立っていた。
今でもはっきりと覚えている、かわいらしい笑顔が特徴で、髪は短く、宝石のような澄んだ瞳が美しい小林奈々だ。好きだった当時と何一つ変わらないまったく同じ顔だった。
近づいてみると十五年以上経った今でも覚えている独特の高い声カワイイ声で呼ぶ声が聞こえた。
「あ!亮くん遅い!」
亮くんとは僕の事だ。佐藤亮太の亮だけをとって亮くんという事だ。当時は皆にそう呼ばれていた。
ここまでくるともうタイムスリップという事を信じずに入られなかった。
丁度十六年前の今日、怖くてずっと逃げていて帰ったら「九時に学校の鉄棒の前に行けばいいのね?」というメッセージのみあった。
このメッセージを聞いた時は思わず涙が出てしまった。自分の情けなさに胸が痛かった。
戻れるならやり直したい。そう思っていた。でもその時は、タイムスリップなどは起こらなかった・・・・でも何故今頃?何故十六年経った今頃なのだろうか?その十六年と言うのに意味はあるのだろうか?
「ねぇ、こんな夜に何の用?すごい寒かったんだけど」
「ゴメンね、待たせちゃって。真剣に聞いて欲しい事あるの」
「何?あらたまって・・・・」
「奈々と出合ったのは高校入学した時だよね」
「うん。中学校は違ってたからね」
「ちょっとくさいけど・・・笑わずに聞いてね・・・・こんな事奈々にしか言えないから」
急に怖くなってきた・・・フラれたらどうしよう?そんな事を考えてしまった。
だけど今更後悔はしたくない。昔、某ドラマで言っていた事を思い出した。
『後になって悔しがっても始まらない。後悔とはそういう言葉だ』
そんな言葉が亮太を勇気付けた。亮太は「よし」と気合を入れ、言った。
「高校で出会うってのいうのは誰とでも、どこででも、どんな風にでもありえる出会いだけどそれが奈々でよかった。・・・・・ずっと好きでした。」
「ホント!・・・・うれしい・・・ずっと私の片思いだと思ってた。亮くんの事を日々想っているこの気持ちいつかは届くと信じていた・・・。まさか本当に届くとは・・・・ありがとう」
亮太は予想外の答えに驚いた。まさか両思いだったとは・・・・まさかずっと僕の事を思っていてくれたとは・・・・・。
「はい、これ」
そう言われ赤色の包み紙で包んである物を手渡された。
「何これ?」と聞いてみると「開けてみて」と言われたので言われたとおりに開けてみると、中には時計が入っていた。
「今日ってさ亮くんの誕生日でしょ?ちょうど誕生日プレゼント渡そうとしてたんだ。私そんなお金持ちでも無いから高くないけし、センスいいとも思わないけどいい・・・そんなもの貰ってくれる?」
「もちろん!カッコいいよ!ありがとう。十年でも二十年経ってもこれを使うよ」
「無理しなくても良いよ。そうだ記念に写真とろ」
そういってカバンからカメラを取り出した。
「はい、チーズ!」
そういってピースして鉄棒の前で二人の記念の写真を撮った。フラッシュが光った瞬間、違う光も亮太には見えた。
「わ!」
思わず叫んでしまった。そして目を閉じた。

ゆっくり目を開けると、目の前には電話があった。
それは僕を過去へと飛ばしてくれた不思議な電話だった。
この電話は僕に何を伝えたかったのだろう?僕には何が足りなかったのだろう?僕はどうしたらいいのだろう?そう考えるようになった。
手首につけている時計を見てみた。
そこにはさっきまでピカピカ光っているブランド物の時計は無かった。
そこにあるのは、今見るといかにも安物で子供っぽく三十過ぎの大人がつける様な時計では無い思い出のあの時計だった。
「ただいま」
一人暮らしのはずの亮太の部屋にそんな声が聞こえた。
電話の近くにある写真をみたら亮太一人しか写っていなかった学校の鉄棒の前の写真には、亮太の隣に奈々の姿があった・・・・・。佐藤奈々の姿が・・・・・・・・。
「何見てるの?」
「これだよ。俺が告白した時の写真」
「あぁこれ。今思うと二人共恥ずかしい事言ってたね・・・・・ヘヘ」
今でもあの言葉を思い出すたびに赤くなってしまう。
自分でも恥ずかしい事言ったな・・・と思っている。でもあの時は言葉が勝手に出て選んでいる暇などなかったのだ。
「でもあのあと亮くん変になったよね?何か急にここどこ?とか言い出したし」
それは恐らく過去の自分に戻ったからだ。でも話を聞くと上手く過去の自分は合わせてくれたようだ。
でも過去の自分はラッキーだよな。何にもしてなくても好きな人と気が付いたら付き合っていたなんて・・・・・・。
そんな事を考えているうちに夜ご飯が出来たようだ。
「今日の夜ご飯はカレーだよ。結構自身あるんだ。あ!そうだ加奈を呼んでこないと・・・・加奈―」
加奈・・・・何と知らず知らずのうちに子供までいるようだ・・・・知らないうちに出来たなんて、子供が生まれる感動を味わい損ねた・・・・。
「もう加奈ったら寝ちゃったみたい。・・・・・二人だけで食べよっか」
「うん。そうだね」
留守番電話のメッセージを聞く前の自分だったらこんな風に二人でご飯を食べるなんて考えもしなかっただろう。でも今は自分の妻なんだ。自分の力妻にしたのだ。
昔、逃げ出してどうする事も出来なかった過去を自分自身で変える事が出来た。
好きになっても逃げ出したりして自分の気持ちを伝えられなかったら意味が無い。多分、この不思議な電話はそんな事を伝えたかったのだろう・・・・・。
「カレーってさ一晩ねかせるとおいしくなるよね。奈々への想いも一晩ねかせたらそれだけ好きになるのかな?」
「なに!いきなり・・・・・何か恥ずかしいよ」


かつてアンドレ・ジッドはこう言った。
『恋をした後のもっとも大きな幸福は、自分の愛を告白することである』

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