苺味
歴史小説  著作者:木口アキノ      オンライン小説SNSへ

[あらすじ]
恋愛ショートストーリー。
年下君がちょっとワガママな先輩に思わずキスしちゃうまでのお話。
苺味
女子ってのは、どうしてこうイラつくんだろう。
カラカラと自転車を押して歩く諒の前方5m先に、白いセーラー服の背中が2つ、薄
闇に浮かび上がっている。
諒と同様に自転車を押して歩く新聞部の先輩、黒川みゆきと柴田美奈子。
3人ともチャリだというのに、なぜ乗らない?
そこがイラつく。
今日は格闘技の試合があるのだ。
早く帰らねば、家に1台しかないテレビはドラマ好きの姉が占領してしまう。
チャンネルを変えようものなら、家庭内で格闘戦が始まるだろう。
諒は早く帰るために、自分の担当である原稿チェックの仕事をサクサク終わらせた。
しかし、紙面レイアウト係の美奈子はみゆきとお喋りをしながらトロトロと仕事をし
た挙句、帰ろうとする諒を引き止め、
「もう外真っ暗!岩崎、まだ帰んないで。怖いから一緒に帰ってよぉ」
などと言い出したのだ。
美奈子は、両手を合わせて「お願い」と言えば諒がなんでも言うことを聞くと思って
るらしい。
そんなところも、腹立たしい。
諒は背後から「早く帰れ!自転車に乗って!」と念を送ってみる。
しかし美奈子の背中は諒の念など跳ね跳ばす。なんとも強靱な背中だ。
「イチゴ飴、食べるぅ?」
美奈子は、鞄から飴の包みを取り出してみゆきに手渡した。
その行動のおかげで、さらに歩みが遅くなっていることに、本人は気付いていない。
諒は美奈子たちに聞こえるように溜息。
「なによぅ」
美奈子が振返る。
「岩崎も欲しいの?」
「いらない」
そういう意味の溜息じゃないんだと、諒はさらに苛立ちを募らせる。
「じゃ、あげない」
美奈子はぷいっと前を向いた。
やがて同じような家が並ぶ住宅街に入り、その一画で
「あたしんち、ここだから」
と、みゆきが立ち止まる。
「じゃあねぇ」
みゆきに手を振り別れた美奈子は、今度は諒の隣を歩き始めた。
美奈子が隣に並ぶと、イチゴ飴の甘ったるい匂いが鼻につく。
「すっげ、甘い匂いするんですけど」
厭味のつもりで言ったのだが、美奈子は諒が飴をねだっていると勘違いしたようだ。
「岩崎には、あげないよ」
こっちを向いてべぇっと舌を出す美奈子。
その舌先がイチゴ色の着色料に染まっている。
イチゴ色の舌は、不覚にも、飴なんかより美味しそうに見えてしまった。
すうっと、諒は美味しそうな舌に引き寄せられた。
驚いた美奈子が唇の奥に舌を引っ込める。
その唇からもイチゴの香りがする。

きっと、この唇は甘いんじゃないだろうか。

そう考えた時には、すでに諒の唇は、飴の成分で少しぺとぺとする美奈子の唇にくっ
ついていた。
美奈子の唇は、予想通り、甘かった。

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