無罪の矛盾
ミステリー小説 シリアス ダーク  文字数約1700字
著作者:月の導化師(mixi)   著作者の作品一覧へ   ホームへ


[あらすじ]
この世には、犯罪を犯しても罪に問われない者が存在する
人は皆平等と言う名の矛盾
この矛盾―皆様は許せるだろうか?許せないだろうか…?
無罪の矛盾
道化師の館へようこそ
今宵は狂気に満ちた一人の道化にまつわる話をお贈りしよう
それでは、お楽しみ下さい―

某日某所、一人の罪人が裁判の判決を控えていた
様子は上の空―今日、自分の生死が決まるというのにも関わらず
虚空に目をやり、指を口にくわえ、何かモゴモゴと呟いている…
数時間後、裁判所からの連絡が入った
判決は無罪―
ただし、警察病院への永久入院を代償に…

彼の異変が生じ始めたのは三年前の事からだった
大きな交通事故に合い、脳に障害を催したのである
身体的外傷は少なく、直ぐに家庭復帰が可能となった
しかし、一般生活に戻った途端、彼の狂気が牙を剥いた

最初は何とも可愛らしい物だった
自分の思いが通らないと分かると自分の指をくわえる
家族からしたら大きな子供が出来た程度の感覚だったろう
だが日を負う毎に、思いが募る程に
彼の行動は過剰になって行った
最終的には、家族に暴力を振るう様になっていた
このままでは手に負えない
家族は身の危険を感じ、彼を障害者病院に入れる事にした
これで一安心だ、家族はそう思っていた
そう思う他無かったのだ―

入院後、最初のうちは平気だった
と言うのも、環境が変わり、同じ様な患者が居たお陰か
彼の狂気が著しく低下したのである
この時にして、彼の年齢は25歳
十分な大人であり、それ相応の理解が可能になった
家族から事情を聞いていた病院側はそう思っていた

それから一年の月日が流れ、その頃合いから彼の男としての本能が疼きだした
夜な夜なテレビを付け、何処からともなく持ってきたAVを見ながら下半身を扱く
病院側としても気付いては居たが、注意するにしても人としての本能の表れである故
誰も止められるものは居なかった

ある日の事、彼の担当を任っている看護婦が世話を焼いていると
彼が急に覆いかぶさってきたのである
単に戯れているだけだと初めは思っていたものの
次第にエスカレートし、仕舞には胸をまさぐり、下着の中に手を入れてきたのである
このままでは危ない、看護婦は必死に抵抗した
だが脳障害等の場合、力を制御する事が出来ないため
尋常で無いほどの力で押さえ込んでくる
耐え余って看護婦は直ぐに悲鳴を上げた
すると直ぐに他の看護師が現れ、彼を取り押さえた
その日から、彼の担当が男の看護師に変わったのは言うまでもない

また更に月日が流れた
あれから、彼の狂気はピタリと治まり
何事も無かったかのように思われた

それから少しして、一人の少女とも取れる容姿の女性が入院してきた
年齢は23なのだが、早期出産の所為で知能障害に陥り、言語が上手く話せないと言う状態であった
その所為もあってか、彼女は年齢に反して14〜5に取れる雰囲気であった

ある日の事、看護師の目を離した隙に彼が居なくなっていた
トイレにでも行ったのだろう
その時看護師はそう思っていた
が、数時間立っても戻ってこない
念の為、トイレを見に行ったが気配を感じない
数ヶ月前の悪事を思い出し、看護師は同僚と共に周囲を捜索し始めた

ガタッ、裏庭を捜索していた看護師は物置小屋から音がしたと他に知らせ
中の様子を見てみた
そこには―数日前入院してきた少女と、それに覆いかぶさる形で腰を振る彼を発見した
看護師は直ぐに彼を押さえ付けたが
それと同時に彼は頂点に達し、下半身から白濁液を辺りに撒き散らした
彼女はそれを浴びながらピクリとも動かない
顔は青ざめ、首根元には手形をした青アザが残っていた―

その後、警察を呼び彼は連行された
検視によると絞殺後、彼は行為に及んだことが分かった
辺りには多少争った痕跡があったものの、少女の様な彼女は力の制御が効かない彼の前では無力である
彼は強姦及び殺人の疑いで逮捕された

結果は無罪に終わったが―

脳障害と言うものは、人権保護と言う名の下
矛盾した過保護を受け手厚く擁護される
誰であれ、犯罪を犯したら犯罪者である事に変わりはしないのに…
この矛盾、皆様はどう思われますか?

と、結論を聞く前に時間になってしまったようだ
本日の道化師の館はこれにて閉館させていただきます
またのご来場、心よりお待ち申しております――


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