ニート革命軍
SF小説 コメディ ファンタジー 異世界  文字数約9200字
著作者:六角オセロ   著作者の作品一覧へ   ホームへ


[あらすじ]
全てがコンピュータによって管理されている国家、政治さえもコンピュータ化されていた。人間たちのニートによる抵抗が始まった・・・『きょんぴぃ隊出動!』の命が下った。
ニート革命軍
『あんたはいいねえ、まだまだ若くて。どうせあたしなんか、あと2年3ヶ月3日 8時間21分35秒の寿命だよ。あ〜〜あ、悲しい運命ときたもんだ・・・』
と、ロボットが愚痴をこぼした。傍らに座っていた姉さんが眉を吊り上げて怒鳴った。
「おまえ、ロボットのくせに、生意気に人間みたいな愚痴を言うんじゃねえよ!」
ロボットは悲しげモードの目で答えた。
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さん!』

「ロボットの愚痴に付き合ってる暇はないんだよ。さあ行くよ!さっさと飲んじまいな!」
『待っておくんなせえよ!』
ロボットはワイングラスに注がれた琥珀色の潤滑油を、いっきに飲み干した。
『ああ〜〜、いつ飲んでも、まずいなあ〜!』
「贅沢言うんじゃないよ。オイル不足なんだから。そんなにまずかったら、味覚センサーをオフにしときな!」
『ああ、これからそうするよ。助言ありがとう。』

「今日は暑いぞ。回路がイカれるから帽子かぶっていきな!」
『あいよっ!』
「もともとイカれてるけどね。」
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さん!』
「早くしろよ。」
『これ似合ってる?』
「いいよ、それで。」
『やっぱり、これにしようかな・・」
「どうでもいいだろう。悲しい運命のロボットなんだから。」
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さん!』

「今日もヘビーメタルなパッションで行くぜぇ!」
『お〜〜〜っ!』
「エンジン始動!」
『お〜〜〜っ!』
「ピンクの空中スクーターにまたがり、いざ出発だーー! お供は、ぐんじょう色のオンボロの空中スクーターに乗っかったイカれロボットの福之助〜〜〜!」
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さ〜〜ん!っでもって、いえぇ〜〜〜い!っでもって、ぐんじょう色ってどんな色? 検索、検索〜!』
「今日も、ど派手な太陽さんが挨拶してるぜぇ!」
『おぉ〜〜〜っ!』
「エンジンぜんかぁ〜〜〜い!」
『鮮やかな藍がかった青色と出ました〜〜〜!』
「おめえの頭、遅ぇんだよ。進路、北北西!」
『お〜〜〜っ!』

「両手を広げぇ!」
『両手を広げぇ!』
「神に感謝しよう!」
『神に感謝しよう!』
「ハレルーヤ!」
『ハレルーヤ? 姉さん、いつからクリスチャン?』
「今日は、そういう気分。」
『はぁ〜〜〜〜ぁ?』
「いざ、出陣じゃ〜〜〜〜〜い!」
『よっ、鉄の女、アイアンメイデン!』
「なんだぁ、そりゃあ?」
『20世紀のヘビーメタルバンドでさあ。』
「そんなの聞いてるのか、お前? 暇人だなあ。じゃなくって、暇ロボットだなあ。」
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さん!』
「だって、ロボットだろう。」
『あっ、そうか。』
「ご機嫌斜めな気持ちは真っ直ぐになったか〜〜〜い!」
『お〜〜〜っ! 直立〜〜!』

「みてるがよい!」
『みてるがよい!』
「りゅうじ!」
『りゅうじ!』
「待ってろよ、ニート極悪人りゅうじ!」
『待ってろよ、ニート極悪人りゅうじ!』
「俺の鉄拳が火をふくぜ!」
『よっ、鉄の女、アイアンメイデン!』

『姉さん、りゅうじからメールが着てますぜ!』
「なんだよ朝から、読んでみんしゃい!」
『みんしゃい? いつから九州人?』
「そんなことはどうでもよかたい。早く読みんしゃい!」
≪ おらあ、今 見合いで忙し〜んだ。 ガキの相手をしている暇と金はね〜え! ≫
「なんだとう〜!ニートのくせに見合いとは生意気ぃな!」
『礼儀を知らない生意気ぃな奴ですねえ!』
「よおし、目にもの言わせてくれるぅわ!」

≪ 悔しかったら 返信しな ! ≫

「なんだとう!」
『どうしましょう?』
「ライブハウスで尻餅をついただろう!と言ってやれ。」
『は〜〜〜ぁ?』
「あいつは頭がいいから、そう言えば分かる。」
『送りましたぜ、姉さん!』
「よ〜〜〜し!」
『姉さん、いつごろ、りゅうじとライブハウスなんざに行ったんで?」
『3年前だったかな・・、お前、口調が時代劇になってるよ?』
「昨夜うしの刻、時代劇を観たもんで。」
『牛が好きだったのか?』

≪ I'm tired of You ! ≫

『なんか来ましたぜ、姉さん!生意気に英語ですぜ!』
「相変わらず、宇宙一の生意気な奴だなあ!訳してみんしゃい!」
『分かりませ〜ん!』
「なんだとう〜!」
『あたしには、英語の翻訳機能がついてないんです。』
「やっぱり安物のロボットは駄目だなあ。」
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さん!』
「悪かった!やけに朝焼けが目にし〜みるぜぇ!」
『は〜〜〜ぁ?』

「あたしゃあ、これから大学に英語を習いに行くぜぇ!」
『は〜〜〜ぁ?』
「無学なこの俺を親にもった おまえは不憫なやつ・・」
『は〜〜〜ぁ?』
「やけに朝焼けが目にし〜みるぜぇ!」
『センチメンタルジャーニーですかい?』
「神は人の上に人を作らず、また人の下に人を作らず。ハァレルーヤ!」
『は〜〜〜ぁ?』
「りゅうちゃん、あのとき起こしてやらなくてごめんね・・、あなたの優しさと寛容さに嫉妬して、素直になれなかったの・・・」
『は〜〜〜ぁ? 大丈夫ですかい姉さん。魂が宇宙の彼方に行ってますぜ。』
「だったら、ボストンに行って、ボストンバッグを買ってきてよ!」
『は〜〜〜ぁ?』
「そうだ!いいことを思いついた。」
『・・・』

「りゅうじに、≪ 大学に行くから500万貸してくれ! ≫とメールしてくれ。」
『は〜〜〜ぁ、相手は神をも恐れぬニート極悪人りゅうじなんですぜ!?』
「ほんとはいい奴なんだぁよ。わたしに〜は、あいつの魂がメラメラと見えるの。」
『は〜〜〜ぁ?』
「幼き日の潤んだ瞳の、のどかな田園で遊ぶ彼の上品なおぼっちゃまな姿が・・・」
『は〜〜〜ぁ?』
「きっと、ニートになる前は、社交的で困った人を助けるジェントルマンだったのよ・・・」

『・・・20万出せば、わたしに翻訳機能つけられるのになあ。』
「・・・あっ、そうか! な〜〜んだ!」

『それじゃあ、ネットで早速購入しましょう!』
「20万ねえ・・・2万くらいのはないのかい?」
『そりゃあ無理ですぜえ!』
「ネットで探してみてよ。」
『絶対に無理です!』
「オークションとかでは無いのかい?中古品だったらあるだろう。1万くらいで。」
『そんなの駄目ですよ。動作保障がありませんよ。』
「イカれロボットには、中古で十分だろう。」
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さん!』
「わかった、わかった、20万のを注文しとけ〜ぃ!」
『わ〜〜〜い!』

「それにしても道路、混んでるなあ。」
『混んでますねえ・・』
「中止にして、ピクニックにしよう!」
『はっ?』
「じょうだん、じょうだん。」
『冗談は顔だけにしてくださいよ〜〜。』

「今日も、ロックンロールな風が吹いてるぜぇ〜!」
『お〜〜〜!』
「お供は、イカれロボットの福之助〜〜〜!」
『そおりゃあないよ、姉さん!そんでもって、お〜〜〜!』
「翻訳機能付新型福之助〜〜!」
『お〜〜〜!』
「今、喧騒の大地に空は鮮やかに光り輝く!」
『お〜〜〜!』
「心は紅蓮の炎!待ってろよ、りゅうじ!」
『お〜〜〜!』
「朝焼けが、やけに目にしみるぜぇ!」
『お〜〜〜!』

「人は自らを信じ、自らを生きる!」
『・・・』
「だが、見るがいい、この天空を! 天空あってこその人、人なのだ!」
『・・・姉さんは、やっぱ偉い!』
「だろう、だろうだろう!」

『なんだか、暑くなりそうですねえ。』
「この冷却ヘルメット、なっかなかいいね。冷えるメット、なんちゃって!」
『いいなあ〜〜、それ。』
「目的地には、何時ごろ着くのきゃな?」
『11時ごろだと思います。』
「そうだ、ノリ弁買わなきゃ。」
『ノリ弁、好きですねえ!』
「まんまと、お見合い作戦にひっかかったな。」
『来るといいんですがねえ・・』
「きっと、来る!」

『あんたはいいねえ、まだまだ若くて。どうせあたしなんか、あと2年3ヶ月2日 8時間11分32秒の寿命だよ。あ〜〜〜あ、悲しい運命ときたもんだ・・・』
「おまえ、ロボットのくせに生意気に人間みたいな愚痴を言うんじゃねえよ!」
『昨日は、せっかくおめかしして行ったのに、りゅうじ来ませんでしたねえ。』
「お見合い作戦失敗か。残念。」
『昨夜届いた英会話翻訳カード、いいみたいです。』
「そうかい。あんなちっぽけなものが20万もしたんだから、頼むよ。」
『そろそろ、宇宙一生意気なりゅうじからメールが来るかも知れませんね。』
「そうだなあ。」

『噂のくしゃみで目が覚めたみたいです。Ryujiからメールが入りました〜!』
「読んでみんしゃい!」
≪ 遠い昔 キコリがいて 木を倒した 木の倒れる音を聞いたことあるか 木の泣き声を聞いたことあるか 俺に会いたかったら 遠い昔のキコリのように 歩いて来い ≫
「うん、、なんだ?」
『・・なんなんでしょう?』
「・・悪いものでも食べたんじゃないか。」
『きっと、そうですね。あいつは食いしん坊だから。』
「それで終わり? 得意の英語はないのかい?」
『あっ、また入りました。』

≪ おまえの母さん でべそ 電車に引かれてぺっしゃんこ! ≫

「なんだとぉ!」

『あっ、また入りました。』

≪ われわれは 労働を拒否する! ニート革命軍 りゅうじ ≫

≪ グレートマザーには負けない! ≫

「・・・なんのこっちゃあ?」
『翻訳機能で直訳すると、偉大なる母という意味です。』
「そのくらいの単語は、大学に行ってなくても分かるわい!」
『たいへん失礼しました。』
「なんかあるんじゃないの、ほかに意味が。」
『それじゃあ、ネットで検索してみましょう。』

『分かりました!読みます。』
【母なるものを表すユング心理学の元型の一。神話では女神・魔女などの姿で現れ、育て養う側面と抱え込み呑み込む側面とをもつ。】
「なあるほどね・・・、、どういう意味じゃ?」
『・・つまり、姉さんは、この”母なるもの”という意味ではないんでしょうか。』
「なあるほど・・つまり、男のへなちょこ理論などは、私の母なるものには通用しないってことか! なあるほど!」
『そうですかね・・・、かな?』
「そうであろう、そうであろう! 逃げないで待ってろよ、りゅうじ!」
『わたしの考えでは、グレートマザーとは、コンピュータの中枢のことではないかと・・』
「そうかな?」
『また、メールが入りました。』
「読んでみんしゃい。」

≪ 男は 穴から生まれ 穴に戻る! ≫

「ほぉらな、男の”理論”なんて、しょせんこの程度の”単純”なものなんだぁよ。」
『哲学的な意味があるのではないでしょうか?」』
「男の哲学は、しょせん、女を惑わす屁理屈!」
『・・・』

≪ おまえの母さん でべそ 電車に引かれてぺっしゃんこ! ≫

「なんだとぉ!」
『どうしましょう?』
「ライブハウスで尻餅をついただろう!と言ってやれ。」
『結論は、そこに行くんですね。』
「ブルースが聞こえるなら、逃げないで待っていろ、りゅうじ!」
『・・・』
「マザーボードを恐れぬ極悪人りゅうじよ、待っていろ!」
『グレートマザーです!』
「あっ、そう。グレートマザーを恐れぬニート極悪人りゅうじよ、待っていろ!」

『ひょとすると彼は、グレートマザー以上の領域を目指しているのでは?』
「それ以上の?」
『神の領域とか・・』
「ますます、恐れを知らぬ極悪の証だな!」
『ひょとすると、空海の領域かもしれません。』
「空海?」
『しかし、なぜ彼はコンピュータ社会を拒み、ニート極悪人の道を選んだのでしょう?ニートはコンピュータ社会では重罪です。首謀者は死罪になります。』
「そんなこと知るか!コンピュータが政治をやってる社会では、その社会に逆らうことが極悪なのだ。と、われわれはコンピュータに教わっている。コンピュータは人間のように間違いを犯さない。」
『それって、ほんとうに人間にとって正しいんでしょうか?』
「おまえは、どっちの味方なんだ!」
『人間はわれわれと違って、生物ですから、論理イコール正義っていうのは、なんか違うような気がするですよ。違う要素が必要なんじゃないんでしょうか。』
「おまえは、どっちの味方なんだ!おまえもCPUだろう?CPUはCPUらしくしろ!で、その空海って何だ?」
『知らないんですか?有名な高野山の空海ですよ。昔、人々を救った。』
「どうやって?」
『わたしはCPUなので、よくは分かりません。』
「だったら、あいつ高野山にいるのかい?」
『そうかも知れませんね。』

「キコリと言えば・・山だな・・・そして、空海・・・」
『理屈で騙そうとしても、彼には通用しないのではないでしょうか。』

≪ われわれの母は大地である! CPUではない! ≫

「高野山と言えば、 精進料理の高野豆腐に、ごま豆腐・・楽しみだなあ。」
『食べ物になると詳しいんですねえ。』
「高野豆腐は天ぷらにすると、これまたけっこうなもので。」
『難波駅で高野線に乗り換えですが、高野線にはスクーター列車がないので、そこからは極楽橋駅までスクーターで行きます。』
「時間が掛かるが、仕方ないな。」
『明日の朝5時半に出発します。』
「ええ、そんな早いの!」

2人が高野山ふもとの極楽橋駅に到着したのは正午前だった。
駅の外には高野山上へ向かう山道と駅名のもととなった極楽橋という橋があるだけだった。まわりには、駅の施設があるだけで人家は全くなかった。
山道には、《一般車両進入禁止》の標識が立ててあった。

『スクーターは、ここに置いて行きましょう。』
「そうだな。」

極楽橋駅からは、高野山上にある高野山駅へと向かう昔ながらの電力ケーブルカーがあった。2人は案内板の前で立ち止まった。

『ケーブルカーで上まで行ったら、巡回バスが出ています。』
「それに乗ろう。」

高野山は、およそ1200年前に、空海(弘法大師)によって開かれた、真言密教の修行道場で、全国に広がる高野山真言宗の総本山。
和歌山県の東北部に位置し、高野町の中心地域。町の南東部は奈良県に隣接し、南西部にかつらぎ町・花園村、北部に橋本市・九度山町が隣接している。
高野山といっても「高野山」という山があるのではなくて、弁天岳(984.5メートル)、陣ヶ峰(1105.8メートル)、楊柳山(1008.5メートル)、摩尼山(1004.0メートル)などの標高千メートル級の山々が連なる山域の総称。
こうした山々に囲まれた東西6キロメートル、南北3キロメートル、周囲15キロメートルに及ぶ標高約800メートル前後の盆地に、金剛峯寺を中心として形成する寺域を始め町家などが集中している。
山の上の盆地に、壇上伽藍と称する聖地があり、そこには、さまざまなお堂や塔が立ち並び、仏像や曼陀羅が参拝者を迎える。
また、うっそうと杉の樹の茂る奥の院には、太閤秀吉から太平洋戦争の英霊まで、さまざまな人々のお墓が立ち並んでいる。平成16年7月7日に高野山は「紀伊山地の霊場と参詣道」として世界遺産に登録されている。

「なんか、ボブ・マーリィの歌が聞こえてきそうなところだなあ・・」
『ボブ・マーリィ・・なんですか、それ?』
「おまえ知らんのか?ボブ・マーリィを!?レゲエの神様だよ!」
『そうなんですか。わたしはヘビメタしか聞かないもんで。あれ聞いてると、CPUの調子が良くなるんですよ。』
「だから、イカれてんだよ。」
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さん!』
「おまえは、声が脳に響いてくる様な音楽を聴いたことないだろう。」
『わたしの脳はCPUですから。』

「ほんとうの言葉だよ、それは真実の言葉。」
『言葉に、嘘とか真実とか有るんですか?』
「そう、あるんだな、それが。」
『そういえば、真言密教の真言という意味も、そういう意味らしいですよ。』
「ほ〜〜ぉ、それは面白い。」

『あなたは、牛や豚に感謝したことがありますか?』
バスの窓から景色を眺めていると、隣に座っていたサラリーマン風の中年の男が、ギョロ目で話しかけてきた。
「えっ、べつにないですけど。」
『牛や豚は、毎日毎日、人間が生きるために、犠牲になって死んでいるんですよ。』
「・・・そうですね。」
福之助が遮るように言葉を入れた。
『金剛峯寺には、どのくらいで着きますか。』
中年の男が、ギョロ目で答えた。
『すぐですよ。10分くらいです。』

金剛峯寺(コンゴウブジ)は真言宗3600ヶ寺の総本山。奥の院や壇上伽藍とともに高野山の中心となる寺院。
「これが金剛峯寺か。」
『すごい建物だなあ・・・」
『金剛峯寺の名称はもとは高野山一山の総称で、もともとここは青巌寺とよばれていたそうです。』
「・・・」
『1593年(文・)、豊臣秀吉が亡母の菩提寺として建立、1863年(文久3)に再建された。明治になり寺号を金剛峯寺と改められたそうです。』

『りゅうじからメールが入りました。』
「読んでみんしゃい!」
≪ おばあちゃんの おにぎりには 大きな梅干が入っていたんだよ ≫
「・・・なんだ?」
『・・なんなんでしょう?』
「・・どいうことだ?」
『・・ひょっとして、”真言”ってやつじゃあないんでしょうか?』
「真言? なんにも感じないぞ・・・」
『わたしの脳はCPUなので・・』
「ただの、酔っ払いの”たわ言”じゃないのか?」

≪ われわれは 母なる大地で働く! ニート革命軍 ≫

「母なる大地で、自給自足で暮らすってことか。」
『どうやら、そうらしいですね。でも、自給自足は禁じられています。』
「そうだな・・・、コンピュータ社会に還元できないからな。」

『どうやって探しましょう?』
「とりあえず、売店にでも尋ねてみよう。」
『そうですね。』

「すみなせん。この写真の人、見ませんでした?」
『ああ、その人だったら、知ってるよ。」
「えっ、ほんとですか。」
『あんたたち、、警察だね。』
「ええ、まあそうですけど。」
『だったら知らないな。』
福之助が口を挟んだ。
『おばさん、今知ってるって言ったじゃないか。』
『知らないったら、知らないよ。人違いだね。』
「警察関係の人、よく来るんですか?」
『最近、多いね。』
「わたしたち、彼らのために来ているんです。」
『どうせ、コンピュータの命令なんだろ。分かってるよ。』
「おばさんも、コンピュータ社会が嫌いなの?」
『大嫌いだね!』
福之助が口を挟んだ。
『駄目だ、他を探しましょう。』
『ロボットには、風の話し声や歌声が聞こえないだろう。』
『風が話したり歌ったりすわけないだろう。無駄だ、行きましょう。』

福之助には、風の話し声も、風の歌声も聞こえなかった。
『姉さん、聞こえる?』
「うん、聞こえるよ。やさしい歌声が、木々と合唱している。」

風になろう 風を感じて
 空になろう 空を感じて
  君たちは 決して一人じゃない

『なんですか、それ?』
「今、ふっと浮かんだんだよ。私って、ひょっとして詩人?」
『わたしはCPUなので、そういうものは、さっぱり分かりません。』
「・・・つまり、こういう感じが欲しいんじゃないのかな、彼らは?」
『詩人の世界みたいなもの、ですか?』
「ううん、もっと根源的DNA的なもの。」
『根源的DNA的・・ですか。』
「つまり、大地を感じて争うことなく平等に生きればいいのよ。」
『そんなこと無理ですよ。生物には闘争本能がありますから。とくに人間は競争が好きですから。』
「はたして、競争だけかな。」
『だから政治コンピュータは、人間の競争本能を満足させるために、人間の競争社会を発展させるようプログラムされています。』
「なるほどね。でも人間には基本的人権というものがある。知ってるかい?」
『え〜〜っと、、検索、検索・・・
≪ 国民は,すべての基本的人権の享有(きょうゆう=生まれながらもっていること)を妨げられない。この憲法が国民に保障する基本的人権は,侵すことのできない永久の権利として,現在及び将来の国民に与へられる。 ≫
と、出ました。』
「それだよ、問題は。」
『どういうことでしょう?現在、思考がループしてます。』

「この場所が、そうさせるのか?ここにいると全てが一体に感じるの。」
『はっ?』
「木も草も、山も空気も、雲や大地も。そして人の心も。」
『はっ、なんのことなんでしょう?』
「そして、善も悪も一体に感じる。」
『・・そんな馬鹿な。悪い人間は罰しなければ社会は混乱します。』
「人間を創ったのは神様でしょう。だったら、神様の責任じゃないの?」
『は〜〜〜!? 姉さんの回路はダイナミックですね〜〜。』
「たとえば、あんたがアホなのは、あんたを作ったメーカーの責任でしょう。」
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さん!』

≪ 地 ・ 水 ・ 火 ・ 風 ・ 空 ・ 識 ≫

『なんでしょう?』
「向こうからやってくる奴、りゅうじじゃないか?」
『そうです、りゅうじです!』

それは、約2年3ヶ月ぶりの出会いだった。あごヒゲをはやし少し痩せてはいるが確かに、りゅうじだった。りゅうじの背後には、彼を慕
うように50人ほどの人々が歩いていた。
彼らは、鬼子母神(きしもじん)の前で止まった。全員が手を合わせた後、ひざまずくと、りゅうじが喋りだした。

『偉大なるグレートマザー、わたしはここに来て、すべてはひとつであることを知りました。
 おばあちゃんは 家族のために きこりのように 遠くまで歩いて買い物に行きました。 でも、元気でした。
 わたしは、そしてわたしたちは、これから新たな旅に出ます。人間らしく生きるための新たな旅に。
 おばあちゃんのように、大地にふんばって、風と語らって元気に生きていきます。
 《人は大地から生まれ大地で育つんだよ》と、おばあちゃんは教えてくれました。 ありがとう。
 偉大なるグレートマザー ・・ 』

一人のリーダー風の中年の男が立ち上がり、そして叫んだ。
『われわれは、大地に引きこもる!』 後を追うように全員が立ち上がり、そして叫んだ。『われわれは、大地に引きこもる!』
『ニート革命軍、万歳!』 後を追うように全員が立ち上がり、そして叫んだ。『ニート革命軍、万歳!』

『姉さん、今です。確保しましょう!』
「ううう・・・」
『姉さん、どうしたんですか?』
突然、姉さんは泣き出した。
「わ〜〜〜ん、泣けて来るねえ〜〜〜!なんだか知らないけど、、涙が出てきちゃうんだよ〜〜!」
『は〜〜〜ぁ!?』
「りゅうじったら、ヒゲも剃らずに・・あんなに痩せちゃって、きっと苦労したんだね〜〜〜!」
『は〜〜〜ぁ!?』
「逮捕するなんて、、そんな可哀想なことできないよ〜〜〜!」
『は〜〜〜ぁ!?』
「あんなに一生懸命がんばっているのに、逮捕なんてできないよ。・・帰ろう!」
『は〜〜〜ぁ!?』
「もう、わたし帰る!」
『は〜〜〜ぁ!? 任務はどうするんですか?』
「行方不明にしときな。・・探したけど居なかったって。」
『は〜〜〜ぁ!? バレたら首になりますよ。』
「わ〜〜〜〜〜ん、りゅうちゃん可哀想〜〜〜、あんなに痩せちゃって! ぅぅぅうう・・・」

彼らの叫びだけが、高野山に響いてた。
  ニート革命軍、万歳! ニート革命軍、万歳!


「今日のことは、消去しときな。」
『分かりました。』

「エンジン始動!」
『お〜〜〜っ!』
「ピンクの空中スクーターにまたがり、いざ出発だーー! お供は、ぐんじょう色のオンボロの空中スクーターに乗っかったイカれロボットの福之助〜〜〜!」
『そ〜りゃあないよ〜〜、姉さん!っでもって、いえ〜〜〜い!
「夕焼けが、やけに目にしみるぜぇ!」
『お〜〜〜!』
「ロックンロールな風が吹いてるぜぇ〜!」
『お〜〜〜!』


《 第1話 おわり 》


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