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[あらすじ]
某有名美大を目指して上京し美術の予備校に通う。今年で2浪目。
なにもかもが嫌になりほとんどヒキコモリ生活。
そんな中で大切な人に出会い、「自分」と「これから」を考え始める…。
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相互刺激 〜progress〜
■1 ヒキコモリ ■
目を覚ますといつもそう。
何時だかわからない。
池袋駅西口から徒歩30分のこの部屋は昔ながらの住宅街にあり、一階で横には道路が通る角部屋。しかも、隣接するように古ぼけた木造のアパートが建っていて、そいつのお陰で一日中日光が遮られている。
だから私は開けても意味のないカーテンを開けるなどという面倒臭いことはしないのだ。
引っ越してきたときは「こんなボロアパート潰せばいいのに…」と思っていたのだが、今となればそんなことはどうでもいい。
それどころか、何もかもどうでもいい。
毎日死んだように眠り続ける。起きたい時に起きる。お腹が空いたらコンビニに行く。部屋にいるときは布団に入ったままTVをみる。
そういえば、東京では夜中にたくさん、今話題の萌え系アニメが放送されている。
あまり興味はないのだけれど…なんだか観てしまう。
猫耳、メイド、おにいちゃん、ハーレム、双子、童顔、はちきれんばかりの胸。
こんな世界に妄想を膨らます人たちが増え続けていることに世も末だなと思った。
実際、なんだかんだといいながら見続けている私もその一人であることに気づき、やっぱり世も末だなと思った。
最近ハタチになった。
一人で迎える誕生日。ハタチになったからといって特に何もかわらない。昔、想像していたハタチとはだいぶ違う。
せっかくだしタバコを買いに行ってみた。何か悪いことをしている気がして狙い定めたタバコの自動販売機をいったん通り過ぎ様子を伺う。
「いや、私は成人なんだから堂々と買え!」と自動販売機にお金を入れてみるが、何を買っていいかわからない。適当によく目にするパッケージのボタンを押した。
と、同時に他のお客さんが後ろに並んだ。
出てきたタバコを掴むと私は一目散に逃げ出した。
買ったタバコは‘マルボロ’の緑色。
「これ、マルボロって名前だったんだな…。」
タバコに火をつける。
吸い方はよく知っている。お父さんがヘビースモーカーだし、なぜだか知らないが今行っている(ことになっている)美術予備校の私の科の人たちは喫煙率が高い。
初めて副流煙以外の煙を吸い込む。でも、奥までの吸い込み方がわからなかった。口内に煙を溜めては吐き出す、そんな意味のない動作を繰り返しながらハタチという今の自分を噛みしめていた6月。
(私の吸うタバコはこれ以降マルボロに固定された)
ヒキコモリはヒキコモリだけれど、一人暮らしだから外に出ないわけにはいかない。
20分も歩けば池袋駅というすばらしい立地条件を活用してみようと思い立った。特に買うものはないけれど、たまには太陽の光を浴びて歩かなければいけないかなと思い、都会へふらふらと出かけてみる。
みんなドコに行くんだろう?何してるんだろう?歩くの早いなぁ。あの女子高生パンツ見えそう。キャッチ多いな。あ〜捕まってる。かわいそ〜。
「すみません、ちょっといいですか?」
って、キャッチきたし!!
「よ、よ、よくないです。急いでますっ。」
早歩きで逃げる。が、ついて来る。
「ちょっとだけでいいんですよ。」
別に急ぐ用事はないのだけれど、本当に、田舎も田舎。モンゴル草原と勝負できるくらいの地方から出てきている私にはキャッチが怖くてたまらなかった。
その後も何度かキャッチに声をかけられた。何度声をかけられてもキャッチには慣れることが出来ない。
久しぶりの気分転換に外に出てみたものの東京の文化が余計に私を鬱にした。(でも久しぶりに人と会話した)
池袋の駅構内は平日の夕方になるとたくさんの人でごった返す。
普通に歩いているつもりなのにどんどん追い越されていくし、まっすぐ歩いているだけでは人にぶつかるので蛇行しながら歩く…。
空気、匂い、音、人の波に酔って頭が痛くなりイライラしてきた。
ドンッ!
避けているはずなのにぶつかる。「チッ」と舌打ちが聞こえた。私が悪いのか!?
‘ただまっすぐ歩くってことがどうしてこの街じゃ出来ないんだ?なんでみんな私の邪魔するの?’
もう何がなんだか解らない。一人にしてほしい。(でも本当は一人になりたくない)たくさんの人の中に放り出されるとより強く孤独を感じる。誰か助けて。もう全部投げ捨てて実家へ、あのモンゴル草原へ帰りたい。でも帰れない。
周りの人たちがみんな私を見ている気がする。
見ないでよ。
笑わないでよ。
ほっといてよ。
(でも、お願いだから私のことを嫌いにならないで…)
私は疲れきっていた。何をしたわけでもない。今、自分が措かれている状況に出口を見出すことが出来ない自分が情けなかった。
その日初めてタバコの煙を肺に入れることが出来た。そして手の甲に火の点いたタバコを押し付けた。
ジュッと音がして火は消えた。
私の目から涙がこぼれた。とめられなかった。声もなくただ涙だけが溢れてきた。
手の火傷は鈍い痛みとなって残っただけ。
もちろん痛かったのだろうけど、その時はそれ以上にもっと痛むところがあったから。
私は、今よりもう少しひどいヒキコモリになり、また眠るだけの日々を繰り返し続けた。
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重たくなりました。ここまで読んでくださってありがとうございます。まだ重いのが続きます。続きも読んでくだされば光栄です。
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