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[あらすじ]
某有名美大を目指して上京し美術の予備校に通う。今年で2浪目。
なにもかもが嫌になりほとんどヒキコモリ生活。
そんな中で大切な人に出会い、「自分」と「これから」を考え始める…。
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相互刺激 〜progress〜
■2 リユウ ■
私は地元では有名な美術の高校に通っていた。私の第一希望でもあったし、県立で、LVもそこそこだ。
実家から電車で片道2時間かかる場所にあるのにツライとは思わなかった。その高校が大好きだったから。
たくさん友達もいて毎日が楽しい。
私は調子に乗っていて、なんでも上手くいくと思っていた。世界は完璧に私を中心に回っていた。
だけど、そんな狭い世界は脆くも崩れ去る。
3年間ずっと気の会う親友がいた。(名前を出すのは気が引けるので彼女と呼ばせてもらいます)何をするにも一緒だったし、好きなこと、やりたいこと、考え、全部がびっくりするぐらい同じだった。周りから見れば見た目というか雰囲気も似ていたらしい。
だから私達はお互いの深いところは何も話さなかった。
なぜなら、なんとなく伝ってしまうから。
ある日、彼女には好きな男の子が出来た。私には彼女が恋をしていること、そして誰を好きなのか何も言われなくても手にとるようにわかってしまった。だけど、私はあえて何も言わずに知らないふりを続けた。
気づいているのは私だけ…。
違う、本当は言えなかったし、気づきたくもなかった。
そう、彼女が好きな人は私が好きな人。
なにも、好みのタイプまで同じじゃなくてもよかったのに…。
でも、今の私にはそんな男よりも彼女の存在のほうが大きかった。
いつもバカなことを言い合い、適当に絡んでは適当にあしらわれて、それだけで十分。‘今’が楽しかったからそれ以上のことは何も望まなかった。男友達みたいなこの関係が続いてくれるだけでいい。
だから私は彼女の恋を本当に応援した。(今となれば、あの時私は、偽善者という演技をしていたのかもしれない…)
実際、彼女の告白を手伝ったのは私だ。キューピットって呼んでくれたっていいはずなのに、私と彼女との関係は悲惨なものになった。
私は悪魔?
彼女が、彼に告白したのは高3の文化祭が終わってから。なんてベタな…。
「私さ、気づいてたんだけど、吉田君のこと好きなんでしょ?せっかくだし思い切って言いなよ。文化祭終わったらもう受験で大変だからさ。今のうち。」
「えっ?でも…なんて言っていいのかわからない…。」
すごくかわいいと思った。私とは明らかに違う部分だった。なんだ、私達全部同じってわけじゃなんだね。
「何でもいいんだよ。伝えられたらそれだけでいいじゃん?」
彼女は小さく頷いた。
そして私は吉田を呼び出し、彼女は言った、
「私、吉田くんのことが…すっ…好きなんです」
うつむいたままで、小さくかすれかけの声は震えていた。それでもよく頑張った。
けれど吉田は
「今は、文化祭がやっと終わったばっかりで、次は受験があるから、そういうことは考えられない。」
彼女は泣いた。
私も一緒になって泣いた。彼女の告白が失敗したことだけじゃない、きっと彼女が振られたことに心のどこかで安心したからかもしれない。
泣き続ける彼女に、
「大丈夫だよ、嫌われてるわけではないんだから、美術の大学って入試試験とかすごく大変だからさ、私も吉田の言ってることすごく解るんだ。わかるでしょ?それに、私達と吉田今までずっと兄弟みたいな感じで仲良しだったから、それが壊れることはないんだよ。私も壊れたら嫌だし。」
彼女は
「そうだよね。」
ってムリに笑顔を作ってくれた。
私は何故だか吉田のほうからも相談を受けていた。
「俺はどうしたらいいんだ?」
「今まで通りにして。それが彼女にとっても吉田にとっても私にとっても一番いいから。」
「わかった…、そうする。」
私は、このまま受験へと向かうつもりだったのにそうもいかない事態へと発展していく…
何かが狂い始めたのはそれから1ヶ月経つか経たないかくらいだった。
実は私の中で「本当はお前のことが好きなんだよ。」と吉田からいわれ、まるでベタな少女マンガみたいな展開を期待していたが、世の中そんなに甘くない。悲しいことに、私は激辛が大好きなのだから仕方がない。食べ物に関しては。
でも、世の中は甘いほうが好きかもしれない。
「これは私の勘なんだけど、あの2人、付きあってるよね。」
学校の帰り道が同じだったクラスの女の子にぼそっと私はつぶやいた。実は、この子が何か知っているような気がしたからカマをかけてみた。これも私の勘だった。
「え?なんでそう思うの?なんか聞いた?」
明らかにおかしい。
「そっか…。やっぱり付き合ってるんだ。」
「…うん。誰にも言わないでって言われたから私も言ってないんだ。だから今のとこ知ってるのは私と吉田の友達の2人だけ。なんでそう思ったの?そんなにあの2人分かりやすいかな?」
「なんかね、私には解っちゃったんだよね。みんなはまだ気づいてないんじゃないのかな。」
「あはは、すごいね。本当に2人って姉妹みたいだね。私が言ったってこと黙っててね。」
「大丈夫だよ。私は聞いたんじゃなくて、自分で解ったんだから。」
私は、なぜ彼女が付き合っているという事実を私に伝えてくれなかったのかわからなかった。いつ話してくれるのだろうと待っていたけれど、彼女はいたって普通に振舞っていた。
「ねぇ、付き合ってるんでしょ?私知ってるんだよ。どうして言ってくれないの?」
私は待ちきれずに言ってしまった。
「え?えっ?誰かから聞いた?」
豆でっぽうをくらったハトの顔ってこんな顔なのか。
「聞いてない。解ったの。私の勘。」
「そっか…。あのあとね、吉田君が普通に話しかけてくれて、今まで通りに戻ったの。だけど、何日か後に付き合おうかって言ってくれてそれから付き合ってる。」
「何で言ってくれなかったの!?遅すぎる。どうして吉田も黙ってたんだ?普通は私に言うだろ?」
「それは…。」
「もういい!」
私は一方的にキレてその場を去ってしまった。何故だかわからない。ウソ、本当はわかる。彼女も吉田も私には何故だかずっとだまったままで、私一人仲間外れにされた気がしてたまらなかった。ずっと何でも言い合える仲間だと思っていたのに。
それだけじゃない、やっぱり本人の口から事実を告げられたことがひどく重たかった。
私だって好きだったのに…。
もうそれからは今まで通りにはいかなくなった。2人の顔をみるのが嫌になった。いつもおはようと話かけてきてくれるが、私は目もあわせずにそっけなく返事をすることしかできなかった。吉田はそのうち私の態度に呆れたのか無視するようになった。
丁度その頃、2人が付き合っているという噂がクラスの話のネタになっていた。どこから漏れたのかはしらない。多分一緒に帰っているところでも見られたのだろう。
もう、聞きたくなかった。どうでもよかった。
そのうち、彼女の方も私のことを無視し始めた。仕方がない、私の方から彼女を無視していたのだから。
クラスのみんなは、私達がおかしいことに気づいていた。
そんなことも、どうでもいい。
嫌な噂が流れてきた。
2人は付き合っていることをクラスの子に知られたくなかったのに、みんなが色々な情報を知っている。それは、私が2人のことを妬み、みんなにいいふらしているというものだった。
だから、2人は私のことをひどく避けるようになってしまったのだ。私が取った態度に問題があるのは十分わかってはいたもののあまりに衝撃的だった。
それを教えてくれたのは、咲(私がカマをかけた子)だった。
咲は私を心配してくれ、その後よき相談相手となりずっと一緒にいてくれた。咲には全てを話した。よくがんばったねって言ってくれたことが何より嬉しかった。
咲の前で声をあげて泣いた。
受験も近い。
2人はもう周囲の目は気にしていないみたいで、いつも一緒にいた。そして2人とも美術の成績はとてもよかった。周りからもお似合いだよねって声が聞こえてくる。全くもってその通りだ。
負けたくない。
せめて美術だけは負けたくない。
だけれど私は楽しいことに流されるばかりの高校生活を送っていたので美術の成績はそんなによくはなかた。
それでも私は今までの遅れを取り戻そうと必死になって頑張った。
私は自分のレベルより少し高い大学を受けることにした。(2人よりは低いレベルの大学だったけれど)
これがまた、ものの見事に滑った。
2人は都会の有名美大(大学は違うけれど)に合格しクラスメイトだけでなく先生たちからも賞賛されていた。流石。もう何も言えない。負け犬の遠吠えすらできない。
卒業式に彼女が私のところへやって来た。私が第一希望の大学に落ちたことはしらない。
「一緒に写真撮ろうよ。」
断る理由がないから一緒に撮った。ついでに私のカメラでも撮ってもらった。
「黙っててごめんね。言えなかった。」
それだけ言うと彼女は去っていった。
卒業式の後に後期日程で大学を受けたが、そこも落ちた。実は地元の私立大学に受かっていたのだが行きたくなかった。私は彫刻学部に行きたいのに受かったところは工芸だった。工芸は私が本当にやりたいこととは違う。親と先生の反対を押し切って私は浪人を決意した。
その年クラスで浪人したのは私一人だけだった。
咲以外にはだれにも言わなかった。咲以外のクラスメイトの連絡先を携帯から一斉削除し、私はメアドを変えた。
私はいわゆる春休みというものに入ったのだが、これから先の見通しはついていない。
卒業式の写真が出来上がり私は何気なく眺めていた。彼女の最後の言葉を思い出す。
“黙っててごめんね、言えなかった。”か…
あっ!
私はその時気がついた。
彼女は‘言わなかった’んじゃない‘言えなかった’んだ。
そう、何も言わなくても解る私達は私だけが解っていたのではなかった。
彼女も私のことをちゃんと解ってくれていたのだった。
彼女だけが解ってくれていた。だから‘言えなかった’。いつから私の気持ちを知っていたのだろう。どんな気持ちで吉田と付き合っていたのだろう。
幸せという温もりの中にもなにか隙間風を感じていたのかもしれない。
今となっては、自分の気持ちを押し込めて彼女を応援したことは浅はかな考えだったのかもしれない。そんな作られたやさしさを彼女は私から求めていたのだろうか。
今となっては取り返しのつかない大切なものを失ってしまった。
それから、私は人と接することに戸惑いを覚えるようになる。
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2話も読んでくださってありがとうございます。目は疲れていませんか?疲れていても私にはどうしてあげていいのかわかりません。重いですか?重くて絶えられなくなったらいつでもドロップアウトできます。ちょっと私が悲しくなるだけのことです。
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