Two Strange InterestS
カテゴリ、キーワード 恋愛小説 ドキドキ ハッピーエンド 長編 ラブコメ  全15話 総文字数約68000字
著作者:霧原菜穂   著作者の作品一覧へ   ホームへ


[あらすじ]
(年齢指定の)ギャルゲーを密かに、こよなく愛する主人公(♀)と、BL世界に逃避するイケメン(♂)の2人の奇妙な利害関係を軸にした、マニアック用語が日常会話のラブコメディ。
メインキャラの趣味思考から、彼らの利害関係と日常を察してください。ただ、内容は地味に純愛系…だと思っています。
Two Strange InterestS
00:Intermission

霧原的前書き
 これからの物語には、ちょっとした「専門用語」が地味に登場します。
 その都度、ある程度は都の口から説明させますが……読む前に知っておくと参考になるんじゃないかと思うのは、以下。

 @エロゲ→18歳以上の、主に大きなお兄さんを対象としたパソコンゲーム。最近はフルボイス主題歌ムービー当たり前、後にコンシューマ――PS2などに移植されたり、アニメになったり。
 エロいだけでなく、最近ではストーリー重視のやたら重たい内容だったり、エロと直接関係ないアドベンチャーパートが妙にハイスペックで古いマシンの場合苦労することもある。
 だったら最初から全年齢対象の家庭用ゲームにすればいいのにと思う私は、やっぱり女だなぁと思う今日この頃である。
 霧原さんが好きなメーカーに関してはまた後日。(語るのかよ)

 A止め絵→イベントCG。まぁ、アニメーションが挿入されるパソコンゲームは多くない。最近はアニメを全面に出したゲームもあるが、あんなのインストールしたらパソコンが止まってしまいそうだ。

 B挿れる→「いれる」と、読んでください。意味は近所の大きなお兄さんに聞いてください。そしてくれぐれも、日常では使わないように。

 CBL→「ボーイズ・ラブ」の略称。「少女たちが漫画で純愛に胸をときめかすことを忘れ、少年たちが漫画の大冒険に夢ふくらますことのなくなったこの時代に生き残った、ただひとつの美しきファンタジー! それがボーイズラブ……スネ毛もワキ毛もない世界、愛と耽美と汁気の世界……!」(美川べるの先生著:漢式青春ばくはつ劇場第3巻17ページより引用)
 ……あぁなるほど。さすが美川先生。納得です。



 パソコンの画面を、見つめる。
 右手はマウスの上で指のみを動かし、左手でポッキーなんかつまみながら。

「うぁっ……やぁっ! やだ、まってぇっ!」
 麻美はベッドのシーツを強く握り締め、大きく背中をそらせると、ひくん、と、体を振るわせた。

 音量、もう少し下げようかな。
 この声優さんの喘ぎ声、たまに高すぎてうるさい。

「はぁっ……はぁ……はぁ……はぅ……う……ばかぁっ……」

 画面のCGが変わらない。アニメーションじゃないから止め絵なのはしょうがないけど、でも、1回の情事に対して使われる枚数が少ないような気がするなぁ。
 ちなみに今回フラグを立てたヒロインの麻美ちゃんは、長い黒髪の日本美人だ。勿論巫女さん。黒髪ロングな日本人女性の職業は巫女さんしかないのかと疑いたくなるのは私だけだろうか? 私だけだろうなぁ。
 勿論美人でプロポーション完璧の彼女。えっと、設定的には同じ歳のはずなんだけど……どこをどう頑張ったら、そんな成長が出来るんでしょうか。ゼヒ私に教えてくださいお願いします。
 画面の向こうは主人公の部屋。いくら思いを寄せているとはいえ、男の1人暮らしにホイホイあがりこんで、しかもこんな勝負下着っぽい可愛い下着を身に着けている(+上は脱がせやすそうなブラウスだし)なんて、「あらかじめ想定してました」って言いなさい? っていうか言え。
 まぁ、突っ込みどころ満載なのだけど……絵のクオリティ高いから文句言うまい。あと、物語も大分面白くなってきたし。
 気になるのは、こういうシーンになるといきなりうるさく感じる、ちょい高すぎなボイスくらいかな。

「待ってって……言ったのにぃ……」

 うーん、やっぱりこのキャラの音声オフにしようかな。嫌いじゃない声優さんなんだけど、実際日常のシーンは可愛いんだけど……こういう声を長く聞いてると画面殴りたくなる。

 頬を赤く上気させて、潤んだ瞳で肩越しに振り返る麻美。
 汗で肌に貼りついた黒髪がひどくなまめかしくて、ぞくり、と、背中が震えた。
「すごく、敏感になっててっ……んっ……挿れられただけで、私っ……」


 あーダメ、もう我慢の限界。


 私はマウスを画面左端まで動かし、メニューからオプションを選択。このキャラボイスをオフに設定すると、そこから本文を早送りして……彼らの二回目を豪快にすっ飛ばしたところでセーブ。
 よしオッケー。これで物語は楽しめるぞ。
 さーて、ここから別のルートに移行するためには……マップでどこに移動すればよかったんだっけ? とりあえず次は、世話焼き幼馴染の美香ちゃんルートにしようかなー?
 私がネットで得た情報を、頭の隅から引っ張り出していると、

「……それ、絶対間違った楽しみ方だと思うぞ?」

 この部屋の主人が読んでいた本から顔を上げ、パソコン用の椅子に座っている私に冷めた声で突っ込む。
 椅子に座っている分、私の方が彼を見下ろす形になる。お互い視力は底辺ギリギリなので眼鏡着用。ノンフレーム眼鏡の彼と、視線が一瞬交錯して、
「だって、精神的に無理。我慢できない」
 右耳につけたクリップ形のイヤホンを外し、肩をすくめる私。
「っていうか、エッチシーンになるとBGMがうるさくなるのよねー。体験版だと余計にそうだから、もう何とかできないかっていつも思うんだけど……」
「沢城のエロゲ語りはもういい。聞き飽きた」
 手を振って話を終わらせようとする彼。いつものことだ。
 私がパソコン上で進めていたのは、18歳未満お断り要素満載のゲーム。世間的な言葉で言うとエロゲ。
 今回のはオーソドックスな恋愛学園コメディなんだけど、SF、RPG、陵辱、ジャンルは問わない。面白そうなら、私の波長に合うなら何でも来いという雑食なのだ。
 ただ、プレイ中にこんな暴挙に出ることも多々あるけど。
 純粋にグラフィックの美しさやシナリオの面白さで楽しみたい場合は、こういうゲーム最大の売りである濡れ場を豪快にすっ飛ばしたって構わなかったりする。第一、女の子の喘ぎ声を聞いて興奮するほど飢えてないし。
 ……まぁ、ヒロインが可愛いから遊んじゃうんだけど。この麻美ちゃん、彼女はさっきの声さえ気に入れば、最初から最後まで、じっくり堪能できたんだけどなぁ。
 女の私視点だから余計に思うんだけど、こういうゲームのヒロイン、人間的に素晴らしい場合もあったりして。
 料理得意、世話焼き、成績優秀、ナイススタイル。ファッションが可愛ければ参考にしたいし、仕草が可愛ければ見習いたいし。
 リアルな私は、そんな彼女たちと間逆の位置にいるだろう。かろうじて肩付近までのびたゆれるストレートの髪に、少し淵のある眼鏡。特にコレといって特徴のない風貌に、ボーイッシュで動きやすい格好が好きなので、いつもジーンズ着用。
 そう、こんな私だから……長い髪の毛を可愛くアレンジして(現実的に不可能な髪型の女の子もいるけどね)、普通にスカートはいてる彼女たちを妙に尊敬してしまうのです。
 冬なのに、とか、思いながらだけど。
 言い足りない私の雰囲気を察しているのだろう。彼は強引に話をまとめた。
「まぁ、頑張ってCGフルコンプ目指してくれ」
「言われなくても」
 そんなこと、言われなくても分かってる。
 私がポッキーをもう一本口にいれると、彼は読書再開。本屋のカバーがかかった文庫本に挟んだしおりを引っ張ると、開いたそのページから読み始める。
 基本無表情なのだ。面白いからって大声で笑ったりしないし、そんなシーンだからって1人で興奮したりもしない。
 彼は外見整っているので、こうい文庫本がオプションとして似合うのだ。知的というか、インテリというか。
 本当に、普通の表情だから……彼が読んでいるは一般文芸の文庫本なのかって思ってしまうんだけど。

 違うんだな、コレが。

 彼が読んでいるのは耽美小説。最近の言葉を借りるならBL――ボーイズラブ、美少年と美少年が繰り広げる禁断の世界を、そりゃーもう濃厚かつ理想的に描いている小説なのだ。
 挿絵も少女漫画並のキラキラ具合で、受けキャラは正直、女性かと思うくらい可愛いことも多々。
 正直、私は専門外っていうか受け付けないジャンルなんだけど……最近はあまり、そんなことも言っていられないような気がして。
 きっとそれは、この彼にも言えることだ。
 さっき散々、画面の向こうのヒロインに突っ込みをいれたけど、よく考えると自分も似たような状況なんじゃないかって、ふと、思うこともある。
 先ほどちょっと述べたように、この部屋の主人は私じゃない。今、胡坐をかいて小説の世界に没頭している彼なのだ。
 要するに、「男の1人暮らしにホイホイあがりこんで」っていうのは私にも言えること。自分の無防備さに多少なりとも危機感を抱いてはいるんだよ、多分。
 ただ。
 私にそういう計算があるとか、彼にそういう下心があるとか……そういうことでは、なくて。
 私たちの関係は、一種の利害関係。きっと世間的には誰からも認められないであろう、そして、可能ならば誰にも知られたくない、そんな関係。

 私は彼が読みたいBL小説を友達から借り、
 彼は私がやりたいエロゲを購入したり借りたりして、交換する。
 加えて学生寮生活の私は、一人暮らしである彼の部屋にあるパソコンにゲームをインストールして遊んでいる。
 彼は私が部屋に居る間に小説を読み、私が帰る頃に本を返す。

 そういう関係だ。


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